「今の派遣先で1年以上頑張っているのに、時給が全く上がる気配がない…」「正社員はボーナスがあって羨ましい。派遣に賞与なんて、やっぱり夢のまた夢?」そんな悩みを抱えていませんか?
実は2020年の法改正により、派遣社員の昇給や賞与は「夢物語」ではなく「現実的な目標」になりました。しかし、ただ待っているだけでは、あなたの時給は1円も上がりません。
この記事では、派遣社員の給与アップの仕組みから、明日から実践できる具体的な交渉術まで、専門的かつ分かりやすく徹底解説します。「どうせ無理」という諦めを、「私にもできるかも!」という希望に変えるための、具体的なノウハウがここにあります。
この記事のポイント
- 派遣社員でも「同一労働同一賃金」により昇給・賞与が得られるようになった
- 給与決定には「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」の2つがある
- 労使協定方式では能力・経験の向上が時給に反映される仕組みがある
- 賞与は①一時金②時給上乗せ③基本給組込の3パターンで支給される
- 給与アップには①契約更新時の交渉②派遣会社の制度活用③スキルアップ転職の3つの道がある
- 交渉は契約更新の1ヶ月〜1ヶ月半前がベストタイミング
- 交渉成功の秘訣は客観的な事実と数字で貢献度を示すこと
- スキルアップと資格取得が最強の昇給・転職の武器になる
なぜ派遣に昇給・賞与が?「同一労働同一賃金」の基本を理解する

- 2020年4月施行の「同一労働同一賃金」により、派遣社員の待遇改善が法的に義務化された
- 正社員と派遣社員の間で不合理な待遇差を設けることが禁止された
- 給与決定には「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」の2つがある
- 大多数の派遣会社は「労使協定方式」を採用している
「頑張りが給与に反映される」それが当たり前になった背景には、国の法改正があります。この法律が、あなたの交渉を支える強力な盾になるのです。
派遣の待遇を激変させた「不合理な待遇差の禁止」
2020年4月1日に施行された「同一労働同一賃金」の最大のポイントは、正社員と非正規社員の間で、基本給、賞与、各種手当など、あらゆる待遇において不合理な差を設けてはならないと定めたことです。
これにより、「派遣だから」というだけの理由で、昇給や賞与の機会が全く与えられない、という状況は違法となりました。派遣社員の働きぶりや能力、経験が正社員と同等であれば、待遇も同等にしなければならないというのが、この法律の核心です。
つまり、あなたが「頑張っているのに評価されない」と感じているなら、その状況は改善される可能性があるということです。法律があなたの味方をしてくれているのです。
あなたの給与を決める2つのルール:「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」

この法律に対応するため、派遣会社は以下のどちらかの方式であなたの待遇を決めています。あなたがどちらの方式で雇用されているかを知ることが、給与交渉の第一歩です。(雇用契約書に記載されています)
派遣先均等・均衡方式
派遣先(あなたが実際に働く会社)の正社員と、すべての待遇(給与決定基準、賞与、福利厚生など)を同じにする方式です。もし派遣先の正社員に明確な昇給制度や賞与があれば、あなたも同等の待遇を受けられます。ただし、この方式を採用している派遣会社はごく少数です。派遣先企業の情報開示が必要であり、運用が複雑になるためです。
労使協定方式
派遣会社が労働者の代表と協定を結び、「同種の業務に従事する一般の労働者の賃金(世間相場)」と同等以上の待遇を確保する方式です。こちらが圧倒的多数で、大手派遣会社のほとんどがこの方式を採用しています。
あなたの給与は、派遣先の給与水準ではなく、厚生労働省が発表する職種別・地域別の平均賃金データなどを基に決定されます。この記事では、ほとんどの派遣社員が該当する「労使協定方式」を前提に、給与アップの方法を解説していきます。
派遣の給与・賞与の仕組みを大解剖!あなたの時給はこう決まる
- 時給は「基本給・賞与・手当部分」と「交通費」を合算して決定される
- 給与のベースは厚生労働省が発表する「一般賃金」データである
- 「能力・経験調整指数」が昇給の明確な根拠となる
- 賞与は一時金・時給上乗せ・月給組込の3パターンで支給される
「労使協定方式」の仕組みを理解すれば、どこを攻めれば給与が上がるのかが見えてきます。給与決定の裏側を知ることで、交渉の武器を手に入れましょう。
時給の内訳:「基本給・賞与・手当」+「交通費」
労使協定方式では、あなたの時給は以下の要素を合算して決められています。
あなたの時給 = ①基本給・賞与・手当部分 + ②交通費
そして、①の部分は、厚生労働省が毎年発表する「一般賃金」というデータに基づいて決められます。この「一般賃金」こそが、あなたの給与を左右する重要な基準なのです。
②の交通費については、実費支給が基本ですが、派遣会社によっては時給に含めて支給する場合もあります。いずれにしても、通勤にかかる費用は保障されるべきものとされています。
給与のベースとなる「一般賃金」とは?
「一般賃金」とは、簡単に言うと「あなたの仕事(職種)を、世の中の正社員がやったら、平均いくらもらえるか」という公的なデータです。
例えば、「令和7年度の一般事務(東京)の平均時給は1,500円」といった形で、職種や経験年数に応じて細かく定められています。派遣会社は、この公的データを100%以上満たすように、あなたの時給を設定する義務があるのです。
この「一般賃金」は、独立行政法人労働政策研究・研修機構が実施する「職業安定業務統計」や「賃金構造基本統計調査」などの客観的なデータを基に算出されます。毎年更新されるため、世の中の賃金動向が反映されることになります。
昇給の根拠はココ!「能力・経験調整指数」と「地域指数」
一般賃金は、さらに細かく「能力・経験調整指数」と「地域指数」というもので調整されます。ここが昇給のポイントです。
- 能力・経験調整指数: 勤続年数に応じて、経験が評価される指数。0年目より3年目の方が、指数が高く設定されています。例えば、同じ一般事務でも、経験0年と経験3年では、基準となる時給額が数百円単位で変わることもあります。
- 地域指数: 物価などを反映した地域ごとの指数。東京は高く、地方は低めに設定されています。同じ職種でも、働く地域によって基準時給が異なるのは、この指数によるものです。
つまり、同じ派遣会社で長く働き経験を積めば、この「能力・経験調整指数」が上がり、それが昇給の明確な根拠となるのです。これが、派遣社員でも「経験を積めば給与が上がる」という仕組みの正体です。
「賞与」はどこに含まれている?3つの支給パターン
労使協定方式では、賞与(ボーナス)も一般賃金データに含まれる「賞与など」の額を基に、以下のいずれかの方法で支払うこととされています。
1. 賞与として支払う(一時金方式)
夏と冬などに、一時金として別途支給する方法です。正社員と同じように、年2回ボーナスが支給されるイメージです。ただし、この方式を採用している派遣会社は比較的少数です。
2. 時間給に上乗せして支払う(時給上乗せ方式)
賞与分を時給に含めて支払う方法で、ほとんどの派遣会社がこの方式を採用しています。例えば、本来の時給が1,400円で、賞与分が100円なら、あなたの時給は1,500円として設定されます。毎月安定して受け取れるメリットがあります。
3. 基本給(月給)などに含めて支払う(月給組込方式)
月給制の派遣社員の場合に、基本給などに含めて支払う方法です。時給制よりも月給制の派遣社員に多い形態です。
あなたの時給には、すでに賞与分が含まれている可能性が高いのです。給与明細に「賞与手当」などの項目があれば、それが該当します。もし不明な場合は、派遣会社の担当者に「自分の時給には賞与分が含まれていますか?」と確認してみましょう。
主婦でもできる!派遣で給与アップを狙う3つの具体的戦略
- 戦略1: 契約更新のタイミングで派遣会社の営業担当に時給交渉する
- 戦略2: 派遣会社の昇給・キャリアアップ制度を積極的に活用する
- 戦略3: 市場価値の高いスキルを身につけて高時給の仕事に転職する
- 成功の鍵は客観的な根拠と具体的な貢献の可視化である
仕組みがわかったところで、いよいよ実践です。あなたが収入を上げるための具体的なアクションプランを3つご紹介します。どれも、特別な経験やスキルがなくても、今日から準備を始められるものばかりです。
戦略1:【王道】契約更新のタイミングで「時給交渉」する

最も現実的で、多くの人が実践する方法です。ただ、やみくもにお願いしても成功しません。成功率を飛躍的に高めるための準備と手順を学びましょう。
交渉のゴールデンタイム
契約更新の意思確認が行われる、更新日の1ヶ月〜1ヶ月半前がベストタイミングです。派遣会社が派遣先と次の契約条件を調整する時期であり、あなたの希望を反映させる余地が最も大きい期間です。更新が決まった後では遅すぎますし、早すぎても具体性に欠けます。
交渉相手
派遣会社の営業担当者です。派遣先の上司に直接交渉するのはNGです。時給を決める権限は派遣会社にあり、派遣先はあくまで派遣料金を派遣会社に支払う立場だからです。筋を違えると、かえって印象が悪くなる可能性があります。
交渉を成功させる5ステップ
- ステップ1: 自己評価この契約期間中に、何ができるようになったか、どんな貢献をしたかを具体的に書き出しましょう。「新しい業務を任されるようになった」「後輩の指導を担当した」「業務効率化の提案を行い採用された」など、客観的な事実をリストアップします。
- ステップ2: 情報収集同じ職種・地域・スキルレベルの派遣求人の時給を、求人サイトなどで調べ、自分の時給が相場と比べてどうかを確認します。相場より明らかに低ければ、それも交渉の材料になります。
- ステップ3: 根拠の整理なぜ昇給してほしいのか、客観的な事実(スキルアップ、業務改善、後輩指導、資格取得など)を基に説明できるように準備します。「頑張っています」ではなく、「〇〇ができるようになりました」という具体的な表現を心がけましょう。
- ステップ4: アポイント営業担当者に「次の契約更新の件で、少しご相談のお時間いただけますでしょうか」と丁寧に連絡します。電話でもメールでも構いませんが、事前に時間を確保してもらうことで、しっかりと話を聞いてもらえます。
- ステップ5: 交渉本番感謝の言葉から始め、準備した根拠を基に、冷静かつ前向きに希望を伝えます。「これまでお世話になり、ありがとうございます。今後もこの仕事を続けたいと考えており、時給についてご相談させていただきたいのですが…」という流れが自然です。
交渉のNGワード・OKワード
NG例 | 理由 | OK例 |
---|---|---|
「生活が苦しいので上げてください」 | 個人的な事情は交渉の根拠にならない | 「いつもお世話になっております。今回の更新にあたり、時給のご相談をさせていただきたく…」 |
「〇〇さんより仕事ができるのに時給が低い」 | 他者との比較は不適切 | 「入社当初はできなかった〇〇の業務も、今では一人で完結できるようになりました」 |
「上げてくれないなら辞めます」 | 脅しと受け取られ逆効果 | 「△△を工夫したことで、部署全体の業務が月5時間削減できました」 |
「みんな不満に思っています」 | 主語を大きくしても説得力はない | 「MOSの資格も取得しましたので、今後はExcelを使ったデータ分析など、より貢献の幅を広げていきたいと考えております」 |
交渉は、感情的にならず、「自分という商品の価値が上がったので、価格(時給)を見直してほしい」とプレゼンする場だと考えましょう。あくまで冷静に、謙虚に、しかし自信を持って臨むことが大切です。
戦略2:【堅実】派遣会社の「昇給・キャリアアップ制度」を活用する

大手派遣会社を中心に、派遣社員向けのキャリアアップ支援制度が充実してきています。これらを活用しない手はありません。派遣会社に登録したら、まずどんな制度があるのかを確認しましょう。
- スキルアップ研修: OAスキル(Excel応用、PowerPoint)、語学(ビジネス英会話、TOEIC対策)、簿記、Web制作など、無料または格安で受講できる研修が多数用意されています。研修修了が昇給の条件になっていたり、修了証明書が転職時のアピール材料になったりします。オンライン受講が可能なものも多く、家事や育児の合間に学べます。
- キャリアカウンセリング: 専門のキャリアカウンセラーに、今後のキャリアプランや、給与を上げるために必要なスキル、おすすめの資格などを無料で相談できます。「どうすれば時給が上がるのか」を専門家の視点でアドバイスしてもらえるので、積極的に活用しましょう。
- 無期雇用派遣(常用型派遣)への転換: 派遣会社の社員として無期雇用され、派遣先で働くスタイルです。月給制になり、昇給や賞与が明確に制度化されていることが多く、雇用の安定性も格段に向上します。安定性を求めるなら、この道も有力な選択肢です。ただし、派遣先を選べない場合があるなどのデメリットもあるため、よく確認しましょう。
これらの制度は、派遣会社の公式サイトやマイページ、担当者からの案内で知ることができます。受け身ではなく、自分から積極的に情報を取りに行く姿勢が大切です。
戦略3:【抜本的】スキルを磨き、より高時給の仕事に「転職」する

現在の職場で昇給が見込めない場合、最も効果的なのが「市場価値の高いスキルを身につけ、それが評価される職場に移る」ことです。転職は大きな決断ですが、時給が200円、300円と大幅にアップする可能性があり、長期的な収入増に最も直結します。
高時給が狙えるスキル例
- 経理・財務: 簿記2級以上、決算業務の経験があれば、時給1,700円〜2,000円以上も狙えます。さらに簿記1級や税理士科目合格などがあれば、さらに高時給が期待できます。
- 貿易事務: TOEIC750点以上、貿易実務経験があれば、時給1,800円〜2,200円が相場です。英文メール対応や通関書類作成などの専門スキルが評価されます。
- CADオペレーター: AutoCADやJw_cadなどの建築・機械系CADスキルがあれば、時給1,600円〜2,000円。設計補助や図面修正など、専門性の高い業務を担当します。
- Web・IT系: RPA(業務自動化)、プログラミング(Python、Java)、Webデザイン(Photoshop、Illustrator、HTML/CSS)などのスキルがあれば、時給2,000円以上も珍しくありません。IT人材不足の現在、需要は非常に高いです。
転職による給与アップの戦略
- ステップ1: 目標設定どのスキルを身につければ、どれくらいの時給が目指せるのかを、求人情報などで具体的に調査し、目標を明確にします。「経理に転職して時給1,800円」など、数値目標を持つことが大切です。
- ステップ2: スキル習得現在の仕事と両立しながら、派遣会社の研修、オンライン講座(Udemy、Schooなど)、通信教育(ユーキャン、資格の大原など)を利用して、目標とするスキル・資格を計画的に習得します。
- ステップ3: 社内転職資格取得後、まずは現在の派遣会社の担当者に、そのスキルを活かせる高時給の仕事を紹介してもらえないか相談します。社内での異動であれば、ハードルが低い場合があります。
- ステップ4: 他社へ転職希望の仕事がない場合や、より良い条件を求める場合は、そのスキルに強い他の派遣会社にも登録し、選択肢を広げます。複数の派遣会社に登録することで、より良い条件の仕事に出会える確率が高まります。
スキルアップは時間がかかりますが、確実にあなたの市場価値を高め、長期的な収入増とキャリアの安定をもたらす、最も確実な投資です。
よくある質問(FAQ)
まとめ:「待ち」の姿勢から「攻め」の姿勢へ。あなたの価値はあなた自身が作る

「派遣社員は昇給しない」という時代は、終わりました。法律があなたの頑張りを正当に評価するよう、社会の仕組みを変えてくれたのです。
しかし、その権利の上にただ座っているだけでは、何も変わりません。自分の価値を客観的に把握し、スキルという武器を磨き、適切なタイミングで論理的にアピールする。この「攻め」の姿勢こそが、あなたの収入を、そしてキャリアを切り拓く唯一の方法です。
時給が100円上がれば、月収は約16,000円、年収は約20万円も変わってきます。その変化は、あなたの生活だけでなく、自信や将来の選択肢を大きく広げてくれるはずです。まずは、次の契約更新に向けて、あなた自身の「貢献リスト」を作成することから始めてみませんか?
今日からできる3つのアクション
- 雇用契約書を確認し、自分が「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」のどちらで雇用されているか確認する
- この契約期間中に身につけたスキルや貢献を、箇条書きでリストアップする
- 派遣会社の公式サイトやマイページで、利用できるスキルアップ研修やキャリア支援制度を調べる
あなたの価値は、あなた自身が作り、証明していくものです。この記事が、あなたの「攻め」の第一歩を後押しする力になれば幸いです。
➡️ 【子育てママが派遣で月10万稼ぐ完全マニュアル】
➡️ 【2. 派遣vs正社員vs契約社員|主婦の働き方3つを徹底比較】
➡️ 【3. 紹介予定派遣で正社員転職|主婦の成功事例と注意点】
参考URL一覧
- 厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html
- 厚生労働省「派遣労働者の同一労働同一賃金について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00001.html
- 厚生労働省「令和5年度の「労使協定方式」における「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」について」https://jsite.mhlw.go.jp/oita-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudousha_haken/kyokutyoutuutatu.html
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