派遣社員の昇給・賞与とは、2020年4月施行の「同一労働同一賃金」により法的に義務化された待遇改善の仕組みで、派遣社員であっても能力・経験に応じた昇給と賞与相当額の支給が保障されています。
大多数の派遣会社が採用する「労使協定方式」では、厚生労働省が毎年公表する職種別・地域別の一般賃金データを基準に時給が決められ、経験年数に応じた「能力・経験調整指数」の上昇が昇給の根拠になります。賞与はほとんどの場合、時給に上乗せされる形で支給済みです。さらに2026年10月には同一労働同一賃金ガイドラインが改正施行され、待遇差の説明を求める権利が強化されます。派遣社員の給与アップは「夢物語」ではなく、法律と制度に裏付けられた現実的な目標です。
この記事のポイント
- 同一労働同一賃金で派遣にも昇給・賞与が保障
- 時給=基本給+賞与+手当+交通費の構造
- 能力経験調整指数が昇給の明確な根拠
- 2026年10月にガイドライン改正で権利強化
- 交渉成功の鍵は客観的事実と貢献の可視化
【結論】派遣社員でも昇給・賞与は当たり前|同一労働同一賃金で変わった3つのこと
結論からお伝えします。2020年4月の法改正以降、派遣社員の昇給と賞与は法律で裏付けられた「当たり前の権利」になりました。ただし、待っているだけでは何も変わりません。仕組みを理解し、自ら動くことが給与アップの第一歩です。
2020年4月の法改正で「不合理な待遇差」が禁止された
厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」にある通り、2020年4月1日に施行された改正労働者派遣法の最大のポイントは、正社員と非正規社員の間で基本給・賞与・各種手当のすべてにおいて不合理な待遇差を設けてはならないと定めたことです。「派遣だから」というだけの理由で昇給や賞与の機会が一切与えられない状況は、この法律によって違法となりました。
給与を決める2つの方式|「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」
この法律に対応するため、派遣会社は以下のどちらかの方式であなたの待遇を決めています。自分がどちらで雇用されているかは雇用契約書に記載されているため、まず確認しましょう。「派遣先均等・均衡方式」は派遣先の正社員と同等の待遇を保障する方式ですが、運用が複雑なため採用は少数です。大多数の派遣会社が採用する「労使協定方式」は、派遣会社が労働者の代表と協定を結び、厚生労働省が発表する職種別・地域別の平均賃金データ(一般賃金)と同等以上の待遇を確保する方式です。
9割以上の派遣会社が「労使協定方式」を選ぶ理由
労使協定方式が圧倒的に多い理由は、派遣先企業の詳細な賃金情報を開示する必要がなく、派遣会社が主体的に賃金設計できるからです。9割以上の派遣元が労使協定方式を採用しており、この記事でもこの方式を前提に給与アップの方法を解説します。労使協定方式では、あなたの時給は派遣先の給与水準ではなく、厚生労働省「派遣労働者の同一労働同一賃金について」で公表される公的データに基づいて決定されます。

この仕組みを知っているかどうかで、交渉の質が決定的に変わります
時給の内訳を完全解剖|一般賃金・能力経験調整指数・賞与・退職金の仕組み
「労使協定方式」の仕組みを理解すれば、どこを攻めれば給与が上がるのかが見えてきます。時給を構成する要素を一つずつ分解して解説します。
時給=基本給+賞与+手当+交通費の4要素で構成される
労使協定方式では、あなたの時給は「①基本給・賞与・手当部分」と「②交通費」を合算して決定されます。①の部分は、厚生労働省が毎年発表する「一般賃金」という公的データに基づいて算出され、派遣会社はこのデータを100%以上満たすように時給を設定する義務があります。②の交通費は実費支給が基本ですが、労使協定方式では一般通勤手当(2026年度適用分は時給換算79円)以上の定額支給とするケースもあります。
「一般賃金」と「能力・経験調整指数」が昇給の明確な根拠
一般賃金とは、あなたの職種を世の中の労働者が行った場合の平均時給を示す公的データです。「職業安定業務統計」や「賃金構造基本統計調査」を基に算出され、厚生労働省の局長通達で毎年更新されます。この一般賃金にさらに掛け合わせるのが「能力・経験調整指数」で、勤続年数に応じて指数が上昇する仕組みです。経験0年を100.0とした場合、1年で約116.0、3年で約127.0と上がっていくため、同じ派遣会社で経験を積めばこの指数が昇給の根拠となります。
加えて「地域指数」という要素もあり、物価水準を反映して東京は高く、地方は低めに設定されます。同じ職種でも働く地域によって基準時給が異なるのは、この指数によるものです。
賞与の3つの支給パターン|あなたの時給にはすでに含まれている可能性大
労使協定方式では、賞与も一般賃金データに含まれる「賞与など」の額を基に支給されます。支給方法は3パターンあります。①夏と冬に一時金として別途支給する「一時金方式」、②賞与分を時給に含めて毎月支給する「時給上乗せ方式」、③月給に含めて支給する「月給組込方式」。ほとんどの派遣会社が②の時給上乗せ方式を採用しているため、あなたの時給にはすでに賞与分が含まれている可能性が高いのです。給与明細に「賞与手当」「職務給」等の項目があれば該当します。
- ①一時金方式:年2回まとめて支給(少数派)
- ②時給上乗せ方式:毎月安定して受取可(大多数)
- ③月給組込方式:月給制の派遣に多い
退職金も3方式で保障|「前払い」なら時給にすでに含まれている
退職金についても労使協定方式で保障されています。3つの方式があり、①退職時に一時金で支払う「退職金制度」、②時給に上乗せして支払う「退職金前払い制度」、③企業型DC(確定拠出年金)に加入する方式です。多くの派遣会社は②の前払い方式を採用しており、局長通達では一般基本給・賞与等に対する退職金割合として5%が示されています。実務上は「6%以上」と表記されることも多いですが、これは算定根拠の違いによるものです。あなたの時給に退職金分が含まれているかは、雇用契約書や給与明細で確認してください。



「賞与も退職金もすでに時給に入っている」と知って驚く方が多いです
【2026年10月改正】同一労働同一賃金ガイドラインが変わる!派遣社員への3つの影響
2026年4月28日に改正省令・告示が公布され、2026年10月1日から施行・適用されます。同一労働同一賃金の施行から5年を経て、裁判例の蓄積を踏まえた重要な改正です。派遣社員の待遇改善に直結する内容を押さえておきましょう。
改正の3本柱|省令・ガイドライン・指針が同時に変わる
厚生労働省「派遣労働者の同一労働同一賃金について」のページで公表されている通り、今回の改正は①省令改正(明示事項の追加)②ガイドライン改正(待遇差の判断基準具体化)③指針改正(派遣元・派遣先の責務強化)の3本柱で構成されています。「ガイドライン改正」だけに注目していると、省令改正による実務上の変更を見落としがちです。
ガイドライン改正のポイントとしては、これまで明確な記載がなかった退職手当・住宅手当・家族手当について、待遇差を設ける場合の判断基準が具体化されました。また、「正社員として人材を確保する目的」という抽象的な理由だけでは、待遇差を合理化できないことも明記されています。
「待遇差の説明を求める権利」が書面で告知されるようになる
省令改正により、派遣社員を雇い入れる際の労働条件通知書に、「正社員との待遇差の内容と理由について説明を求めることができる」旨を明示することが義務化されます。つまり、2026年10月以降は「自分の待遇がなぜこの金額なのか」を派遣会社に堂々と質問できる権利が、入社時に書面で保障されるのです。この権利を活用すれば、時給交渉の出発点として「一般賃金に対して自分の時給がどの水準にあるのか」を確認できます。
派遣社員が今すぐ確認すべき3つのこと
2026年10月の改正施行に備えて、今のうちに以下の3点を確認しておきましょう。
- 雇用契約書で自分の待遇決定方式を確認
- 給与明細で賞与・退職金が時給に含まれているか確認
- 派遣会社に自分の時給の根拠(一般賃金との比較)を質問
「聞いていいのかな」と遠慮する必要はありません。待遇差の説明を求めることは法律で認められた権利であり、それを理由に不利益な取り扱いをすることは禁止されています。改正後はこの権利が入社時から書面で告知されるため、より安心して質問できる環境が整います。



この改正を武器にすれば、交渉のハードルが一気に下がります
主婦でもできる!派遣で給与アップを実現する3つの具体的戦略
仕組みがわかったところで、いよいよ実践です。特別な経験やスキルがなくても、今日から準備を始められる3つの戦略を、優先度順に解説します。
戦略1:契約更新時の時給交渉|5ステップとNG/OKワード表
最も現実的で多くの人が実践できる方法です。交渉のゴールデンタイムは契約更新の1ヶ月〜1ヶ月半前。派遣会社が派遣先と次の契約条件を調整する時期であり、あなたの希望を反映させる余地が最も大きい期間です。交渉相手は派遣会社の営業担当者で、派遣先への直接交渉はNGです。
成功率を高める5ステップ:まずこの契約期間中に身につけたスキルや貢献を具体的にリストアップします(ステップ1)。次に、同職種・同地域の派遣求人の時給を調べて相場を把握します(ステップ2)。なぜ昇給すべきか客観的な事実で説明できるよう整理し(ステップ3)、担当者にアポイントを取り(ステップ4)、感謝の言葉から始めて冷静かつ前向きに希望を伝えます(ステップ5)。
| NG例 | なぜNGか | OK例 |
|---|---|---|
| 「生活が苦しいので上げてください」 | 個人的事情は交渉の根拠にならない | 「入社当初はできなかった〇〇の業務も、今では一人で完結できるようになりました」 |
| 「〇〇さんより仕事ができるのに」 | 他者との比較は不適切 | 「△△を工夫したことで、部署全体の業務が月5時間削減できました」 |
| 「上げてくれないなら辞めます」 | 脅しと受け取られ逆効果 | 「MOSの資格も取得しましたので、貢献の幅を広げていきたいと考えています」 |
交渉は「自分という商品の価値が上がったので、価格(時給)を見直してほしい」とプレゼンする場です。時給100円のアップは月収約16,000円、年収約20万円の差になります。冷静に、謙虚に、しかし自信を持って臨みましょう。
戦略2:派遣会社のキャリアアップ制度を積極活用する
大手派遣会社を中心に、スキルアップ研修(Excel応用・簿記・TOEIC対策等)、キャリアカウンセリング、無期雇用派遣への転換など、無料または格安で利用できるキャリア支援制度が充実しています。研修修了が昇給の条件になっている場合や、修了証明書が転職時のアピール材料になることもあります。オンライン受講可能なものも多く、家事や育児の合間に学べます。派遣会社の公式サイトやマイページで「どんな制度があるか」を自分から確認することが大切です。
戦略3:スキルを磨いて高時給の仕事に転職する
現在の職場で昇給が見込めない場合、最も効果的なのが市場価値の高いスキルを身につけて高時給の仕事に移ることです。簿記2級があれば経理・財務で時給1,700円〜2,000円以上、TOEIC750点以上なら貿易事務で時給1,800円〜2,200円、RPA・プログラミングスキルがあればIT系で時給2,000円以上も狙えます。まずは現在の派遣会社の担当者に「スキルを活かせる高時給の仕事はないか」と相談し、社内異動を探ります。なければ他の派遣会社にも登録して選択肢を広げましょう。詳しい派遣会社選びは主婦におすすめ派遣会社ランキングをご参照ください。



時給100円の差は年間20万円。この差を「まあいいか」で済ませないでください
派遣社員の昇給・賞与に関するよくある質問
- 給与明細に「調整給」や「職務給」という項目がありますが何ですか?
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労使協定方式において、一般賃金の基準を満たすために時給を調整する際に使われることが多い手当です。基本時給が基準に少し足りない場合にその差額を補填しているケースや、賞与分・退職金分を含めている場合があります。名称は派遣会社によって「業務手当」「資格手当」など異なるため、何が含まれているか担当者に確認してみましょう。
- 派遣先の上司に「時給を上げたい」と言われました。期待していいですか?
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嬉しい評価ですが、派遣社員の時給を決める権限は派遣会社にあります。派遣先の上司は派遣料金の交渉はできても、あなたの時給を直接変更できません。その上司の評価を派遣会社の担当者に伝えてもらうようお願いするのが効果的です。「〇〇部長が私の働きを評価してくださっているようです」と担当者に共有すれば、交渉の強力な後押しになります。
- 時給交渉をしたら契約を切られないか不安です。
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正当な理由と根拠に基づいた交渉を理由に契約を打ち切ることは、不利益な取り扱いにあたり問題となる可能性があります。大切なのは高圧的な態度ではなく「相談」として、謙虚かつ前向きな姿勢で臨むことです。日頃から担当者と良好な関係を築き、信頼関係を構築しておくことが最大のリスクヘッジになります。
- 退職金は本当にもらえるのですか?
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はい。労使協定方式では退職金も保障されています。方式は3つあり、①退職時に一時金で支払う「退職金制度」、②時給に上乗せする「前払い制度」(局長通達で一般基本給・賞与等の5%が基準値として示されています)、③企業型DC(確定拠出年金)に加入する方式です。多くの派遣会社は②を採用しているため、すでに時給に退職金分が含まれている可能性が高いです。雇用契約書を確認してください。
- 派遣でも役職手当や資格手当はもらえますか?
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はい。労使協定方式では、役職手当・特殊作業手当・資格手当なども一般賃金データに含まれており、該当する業務を行っていたり対象資格を保有していたりすれば、時給に反映されるべきものです。たとえば危険物取扱者の資格を持ち、その資格が必要な業務を担当しているなら、資格手当が支給されるべきです。反映されていない場合は担当者に確認しましょう。
- 時給交渉がうまくいきませんでした。次に何をすべきですか?
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感情的にならず、担当者に「次に昇給するためにはどんなスキルや実績が必要ですか」と具体的なフィードバックを求めましょう。目標が明確になれば、次の契約更新に向けて対策を立てられます。交渉経験自体がキャリアにとって貴重な学びですから、諦めず次の準備を進めてください。
- 時給が上がるタイミングは契約更新時だけですか?
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基本的には契約更新時が一般的ですが、局長通達で毎年公表される一般賃金の改定に伴い、年度途中で時給が自動改定される場合もあります。多くの派遣会社では4月に一般賃金が改定されるタイミングで全体的な時給の見直しが行われます。派遣先からの評価が非常に高く派遣料金が増額された場合に、期間中に時給が上がるケースもあります。
- 2026年10月の改正で、派遣社員の時給は自動的に上がりますか?
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改正によって自動的に時給が上がるわけではありません。今回の改正はガイドラインの明確化と説明義務の強化が主な内容です。ただし、待遇差の説明を求める権利が書面で告知されるようになるため、自分の時給の根拠を確認しやすくなります。根拠が不十分であれば、それが交渉の材料になる可能性があります。
- 扶養内で働いている場合も昇給交渉できますか?
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もちろんできます。ただし時給が上がると年収が扶養の壁を超える可能性があるため、年収への影響を事前にシミュレーションしておくことが大切です。詳しい計算は扶養内派遣の年収計算シミュレーターでご確認ください。
- 一般賃金の最新データはどこで確認できますか?
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厚生労働省のウェブサイト「派遣労働者の同一労働同一賃金について」のページで、毎年度の局長通達として公表されています。職種別・地域別の基準時給や能力経験調整指数の一覧が掲載されたPDFファイルが閲覧できます。自分の職種の基準値を確認しておくと、時給交渉の際に客観的な根拠として活用できます。
まとめ|「待ち」の姿勢から「攻め」の姿勢へ。あなたの価値はあなた自身が作る
「派遣社員は昇給しない」という時代は、2020年の法改正で終わりました。そして2026年10月のガイドライン改正により、待遇差の説明を求める権利がさらに強化されます。法律と制度は確実にあなたの味方になってきています。
- 同一労働同一賃金で昇給・賞与が法的に保障
- 能力経験調整指数の上昇が昇給の根拠
- 2026年10月改正で待遇説明の権利が強化
- 時給100円アップ=年収約20万円増
- 交渉は契約更新の1〜1.5ヶ月前がベスト
しかし、権利の上にただ座っているだけでは何も変わりません。自分の価値を客観的に把握し、スキルを磨き、適切なタイミングで論理的にアピールする「攻め」の姿勢こそが、収入とキャリアを切り拓く唯一の方法です。まずは次の契約更新に向けて、あなた自身の「貢献リスト」を作成することから始めてみませんか。
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「どうせ無理」を「やってみよう」に変える一歩を踏み出してください
参考URL一覧
- 厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html
- 厚生労働省「派遣労働者の同一労働同一賃金について」:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00001.html
- 厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン」:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190591.html
- e-Gov法令検索「労働者派遣法」:https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088
- 一般社団法人日本人材派遣協会(JASSA):https://www.jassa.or.jp/
- 株式会社エフネクスト 会社概要:https://f-next.co.jp/about/











