「派遣先から”直接雇用になりませんか”と言われた。でも時給が200円も下がるって…受ける価値あるの?」――この疑問、実は正解が一つではありません。派遣から直接雇用への切替は、時給・福利厚生・安定性の3軸で損得を計算して判断すべき意思決定です。
派遣から直接雇用パートで時給が200円前後下がるのは、マージン率(20〜30%)消失による構造的な現象。しかし賞与・退職金・有給を含めた年収ベースでは逆転するケースもあります。時給100円ダウン以内かつ賞与ありなら受ける価値あり、200円以上ダウンで福利厚生もないなら断るのが合理的。本記事では派遣会社エフネクストの現場経験から、損得計算の具体的な方法と判断基準を解説します。
この記事のポイント
- 時給だけで判断しない
- 年収ベースで逆転もある
- 100円以内ダウンなら検討
- 200円以上なら断る根拠あり
直接雇用パートで時給が下がっても「年収ベースで逆転する」ケースがある|3軸の損得判断
派遣から直接雇用パートに切り替えると時給が100〜300円下がるケースが多い。しかし①年収(賞与・交通費を含めた総額)②福利厚生(有給・退職金・社会保険)③安定性(雇用期間・契約更新リスク)の3軸で計算すると、逆転するケースが珍しくありません。キャリアパスの全体像は派遣からのキャリアパス完全ガイドもあわせてご覧ください。
損得計算の軸①年収|時給×時間×日数だけでなく賞与・交通費・手当を加算する
「時給が下がる=収入が減る」とは限りません。具体例で見てみましょう。派遣時給1,400円、フルタイム(月160時間)の場合、月収は22.4万円、年収は約268万円。直接雇用パートで時給が1,200円に下がっても、賞与が年2回(計30万円)、交通費全額支給(月1万円=年12万円)、皆勤手当(月5,000円=年6万円)がつくと、年収は約278万円。時給だけ見ると200円のマイナスなのに、年収ベースでは10万円のプラスになるわけです。
| 項目 | 派遣(時給1,400円) | 直接雇用パート(時給1,200円) |
|---|---|---|
| 月収(160時間) | 224,000円 | 192,000円 |
| 年間給与(12か月) | 2,688,000円 | 2,304,000円 |
| 賞与 | なし | 300,000円(年2回計) |
| 交通費(年間) | なし(時給に含む) | 120,000円(全額支給) |
| 皆勤手当(年間) | なし | 60,000円 |
| 年収合計 | 2,688,000円 | 2,784,000円 |
| 差額 | 直接雇用が+96,000円(約10万円プラス) | |
もちろん、賞与も交通費もないケースなら逆転はしません。大事なのは「時給」の一点だけで判断せず、年収の全体像を計算すること。
損得計算の軸②福利厚生|有給引き継ぎ・退職金・社会保険を確認する
年収に直接反映されない「隠れた福利厚生」も重要です。確認すべき3つの項目があります。第一に、有給休暇の扱い。法律上、直接雇用への切替時に派遣時代の有給を引き継ぐ義務はありません。ただし企業によっては交渉で引き継ぎ可能なケースもあるため、切替前に有給の残日数を確認し、使い切るか交渉材料にするか決めておくのが鉄則です。第二に、退職金制度の有無。直接雇用パートでも退職金制度がある企業は存在し、年間3〜5万円の積立相当額は「見えない年収アップ」。第三に、社会保険の加入条件(2026年10月以降は賃金要件撤廃で対象拡大)。
損得計算の軸③安定性|3年ルール終了vs直接雇用の安心感を天秤にかける
派遣には3年ルールがあり、同じ課で最長3年。3年ルールの到来が迫っている場合、直接雇用への切替は「同じ職場で働き続けたい」という希望を叶える現実的な選択肢です。「時給が100円下がるけど、来年3年ルールで職場を離れるリスクがなくなる」なら、安定性のメリットは大きい。逆に、3年ルールまでまだ余裕がある場合は、急いで受ける必要はありません。

時給だけで判断する人が多いが、年収ベースで比較すると結論が逆になることがあります!
なぜ派遣→直接雇用パートで時給が下がるのか?3つの構造的理由
時給が下がる構造的理由は①派遣会社マージン(20〜30%)がなくなり企業のコスト感覚で時給が設定される②企業は派遣社員の正確な時給を知らないため低く設定してしまう③人件費削減が目的の「引き抜き」パターンがある、の3つ。時給ダウンは「あなたの評価が低い」のではなく、構造の問題です。
理由①マージン率20〜30%の消失|企業は「派遣料金−マージン=あなたの時給」を知らない
企業が派遣会社に支払う「派遣料金」と、あなたの手元に届く「時給」は別物。その差がマージンです。KCTPの解説記事によれば、マージン率は20〜30%が相場。つまり企業が時給換算で2,000円を払っていても、あなたが受け取るのは1,400〜1,600円。企業はマージン分のコストが浮くため、直接雇用時の時給を「派遣時より低く」設定しても、自社の人件費は変わらない(むしろ減る)のです。派遣vsパートの基本比較は派遣とパート、どっちが主婦におすすめ?でも解説しています。
理由②企業の人件費削減が目的の「引き抜き」パターン
もう一つ知っておくべきは、企業が直接雇用を持ちかける動機。CareeRecoの解説でも指摘されている通り、企業が直接雇用したがる最大の理由は「マージン分の人件費を削減したい」から。あなたの能力を高く評価しているのは事実ですが、それと同時に「もっと安く使いたい」という企業側の論理が働いている点は冷静に理解しておくべきです。特に派遣会社に内緒で直接雇用を持ちかけてくる企業は、紹介手数料(年収の20〜30%)を払いたくないのが本音。



正直、企業が”内緒で”直接雇用を持ちかけるのは紹介手数料を払いたくないからです!
理由③直接雇用は「お客様扱い」から「社内の人」への移行を意味する
見落としがちですが重要なポイント。派遣社員は法律上「派遣先の従業員」ではないため、ある種の「お客様扱い」を受けています。トラブルがあれば派遣会社が間に入ってくれるし、業務範囲も契約で明確。しかし直接雇用になると、あなたは「社内の人」になる。業務範囲が曖昧に広がり、残業を頼まれやすくなり、人間関係のトラブルも自分で対処しなければならない。派遣会社という「クッション」がなくなるリスクは、金額には表れないけれど見過ごせません。
直接雇用パートを「受けるべき」3つのケース
直接雇用を受けるべきケースは①時給ダウンが100円以内で賞与・退職金がつく②同じ職場で長期安定して働きたい(3年ルール回避)③正社員登用への道筋が明確にある、の3つです。特に3年ルール到来が迫っている場合は直接雇用の安定性が大きなメリットになります。
ケース①時給ダウン100円以内で賞与・退職金がつく場合
前述のシミュレーションのとおり、時給が100〜200円下がっても賞与・手当で年収が逆転するケースは実際にあります。エフネクストで直接雇用化をサポートした40代主婦Gさんの例では、派遣時給1,500円→直接雇用パート1,350円(150円ダウン)でしたが、賞与年2回(計35万円)+交通費全額支給で、年収ベースでは約12万円プラス。「同じ職場で長く働ける安心感が何より大きかった」とGさんは振り返っています。
ケース②同じ職場で長期安定して働きたい場合(3年ルール回避)
3年ルールの到来が1年以内に迫っている場合、直接雇用への切替は「同じ職場に残る」ための最も確実な方法です。3年ルール後の選択肢(別の課への異動・無期雇用派遣・別の派遣先)はどれも不確実な部分がある。「この職場の人間関係も仕事も気に入っている」なら、時給100円程度のダウンは「安定のコスト」として合理的に受け入れられます。
ケース③正社員登用への道筋が明確にある場合
直接雇用パートを経て正社員登用の可能性がある場合は、短期的な時給ダウンを「投資」と考えられます。ただし確認すべきは「過去3年で何名がパートから正社員に登用されたか」「登用基準は明文化されているか」の2点。制度はあるが実績ゼロという企業は、登用の期待を持たせて安く働かせる構図になりがち。紹介予定派遣の詳細は紹介予定派遣は主婦の味方もご覧ください。



時給100円ダウンまでなら受ける価値あり、がコーディネーター経験からの率直な感覚です!
直接雇用パートを「断るべき」2つのケース
直接雇用を断るべきケースは①時給が200円以上下がり賞与・退職金もない②直接雇用後の労働環境が派遣時より悪化する見込みがある、の2つ。「内緒で」直接雇用を持ちかけてくる企業は紹介手数料回避が目的の場合が多く注意が必要です。
ケース①時給200円以上ダウンで賞与・退職金もない場合
時給200円以上のダウンかつ賞与・退職金もない場合、年収ベースでプラスになる可能性は極めて低い。フルタイム(月160時間)で時給200円ダウンなら月32,000円、年間38.4万円の減収。年間40万円近い減収を「安定性」だけでカバーするのは無理がある。弁護士の回答(非正規労働者相談窓口)でも、任意の直接雇用では労働条件は労使交渉で決まるとされており、不利な条件を飲む義務はありません。「断ります」と言っていい。断り方のコツは「ありがたいお話ですが、現在の条件との差が大きく、家計のシミュレーションが合いませんでした」と伝えるのが角が立ちにくいです。
ケース②労働環境が悪化する見込みがある場合(残業・業務拡大・人間関係)
エフネクストで見た失敗事例を紹介します。40代主婦Hさんは、派遣時給1,350円→直接雇用パート1,150円(200円ダウン)で切替を受けました。しかし直接雇用後、業務範囲が大幅に拡大。「パートなのに正社員と同じ売上管理をやらされ、残業も月10時間増えた。時給は下がったのに仕事は増えた」と後悔。直接雇用後の業務範囲・残業の有無・責任の範囲は、必ず書面で確認してから受けるのが鉄則です。口頭の約束は後からひっくり返ります。



派遣会社という”クッション”がなくなると、トラブル時に一人で対処しなければなりません!
オファーを受けた時の交渉術|時給・条件・タイミングの3つの交渉ポイント
直接雇用のオファーを受けたらまず「保留」にして条件を精査しましょう。交渉ポイントは①時給(現在の派遣時給を根拠に提示)②条件(賞与・有給引き継ぎ・業務範囲の明文化)③タイミング(派遣会社に報告するかどうか)の3つです。
交渉①時給|「現在の派遣時給」を根拠に希望額を提示する方法
交渉で使える具体的なセリフ例。「現在の派遣時給が○円で、直接雇用になる場合でも○円以上でないと家計のシミュレーションが合いません。御社に長く貢献するためにも、ご検討いただけませんか」。ポイントは「辞めます」ではなく「長く働きたい」をベースに交渉すること。企業は直接雇用後に長く働いてほしいと思っているため、「長期勤務の意欲」は最大の交渉カードです。
交渉②条件|賞与・有給引き継ぎ・業務範囲の明文化を書面で確認する
時給以外にも確認すべき項目は多い。以下のチェックリストを参考にしてください。
- 賞与の有無・支給月数・支給条件
- 退職金制度の有無
- 有給休暇の引き継ぎ可否
- 交通費の支給上限
- 業務範囲の明文化(契約書に記載)
- 残業の有無・上限時間
- 昇給制度の有無・基準
すべて書面(労働条件通知書)で確認するのが絶対条件。「口頭で聞いた条件と違った」というトラブルは、書面確認の徹底で防げます。
交渉③タイミング|派遣会社に報告すべきか?紹介手数料の問題を理解する
ここが最大のジレンマ。派遣会社に直接雇用の打診を報告すると、企業は派遣会社に紹介手数料(年収の20〜30%、クラウドワークスTimesによれば事務職で年収300万円なら60〜90万円)を支払う必要が出てきます。この負担を嫌って「やっぱり直接雇用の話はなかったことに」となるリスクがある。一方、報告せずに切り替えると派遣会社との信頼関係が崩れ、万が一直接雇用がうまくいかなかった場合に戻る場所がなくなる。現実的な落としどころは「派遣会社の営業担当に”条件面の相談”として報告する」。「直接雇用の打診がありました」ではなく「今後のキャリアについて相談したい」と切り出せば、派遣会社も味方として動いてくれやすいです。



派遣会社に報告すると紹介手数料が発生し、話自体が消えるリスクがある。ここが最大のジレンマです!
直接雇用を断った後の選択肢|派遣継続・無期雇用派遣・別の派遣先
直接雇用を断る場合の次の手は①同じ派遣先で派遣継続(3年ルール内)②無期雇用派遣に転換(3年制限なし)③別の派遣先に移る、の3つ。断ること自体にペナルティはなく、「断ったら気まずくならない?」という心配も杞憂なケースが大半です。
選択肢①同じ派遣先で派遣継続|3年ルール内の残り期間を確認
直接雇用を断っても、派遣契約は別途継続します。断ったことを理由に派遣契約を打ち切ることは法的に問題があるため、断った翌日から普通に働き続けている人が大多数です。ただし3年ルールの残り期間は確認しておきましょう。残り1年を切っている場合は、次の一手を派遣会社と早めに相談しておくのが安心。契約更新に不安がある方は派遣の契約更新なしもご覧ください。
選択肢②無期雇用派遣に転換|3年制限なし+月給制の安定
「時給は下げたくないが安定も欲しい」なら、無期雇用派遣への転換が選択肢になります。3年ルールの適用外となり同じ派遣先で制限なく働ける。月給制・賞与ありの派遣会社も増えています。「派遣の時給」と「直接雇用の安定性」を両立できる唯一の雇用形態と言えます(ただし派遣先を選べないリスクはあり)。
選択肢③より好条件の別の派遣先に移る
今の派遣先にこだわりがなければ、もっと好条件の別の派遣先に移る手もあります。派遣のメリットは「職場を選べる」こと。派遣会社に「今の時給以上で、交通費支給・残業なしの事務案件」と条件を伝えれば、マッチする求人を探してくれます。直接雇用を断ったからといって行き詰まるわけではない。選択肢はたくさんあります。



断っても気まずくなることは少ない。同じ派遣先で普通に働き続けている人は多いですよ!
派遣から直接雇用パートへの切替に関するよくある質問
- 派遣から直接雇用パートで時給が下がるのは普通ですか?
-
珍しくありません。派遣会社マージン(20〜30%)がなくなる分、企業は直接雇用の時給を低く設定することが多く、200円前後のダウンが最も多いパターンです。
- 直接雇用を断ったらクビになりますか?
-
なりません。直接雇用の打診を断ることにペナルティはなく、派遣契約は別途継続されます。断った後も同じ派遣先で普通に働き続けるケースがほとんどです。
- 派遣会社に直接雇用の打診を報告すべきですか?
-
原則報告すべきですが、報告すると紹介手数料(年収の20〜30%)が発生し、直接雇用の話自体が消えるリスクがあります。迷ったら「キャリア相談」として派遣会社の営業担当に持ちかけるのが安全策です。
- 有給休暇は直接雇用に引き継がれますか?
-
法律上の引き継ぎ義務はありません。ただし企業によっては交渉で引き継ぎ可能なケースもあります。直接雇用前に派遣の有給を使い切るか、交渉材料にするのが一般的です。
- 直接雇用後に「やっぱり派遣に戻りたい」場合は?
-
可能ですが、同じ企業に再度派遣されるかは保証されません。離職後1年以内は同一企業への派遣が法律上制限されるため注意が必要です。直接雇用前の条件確認を徹底し、後悔リスクを最小化してください。
- 派遣先が「内緒で」直接雇用を持ちかけてきた場合は?
-
引き抜き行為自体は違法ではありません(労働者派遣法第33条)。ただし紹介手数料回避が目的の場合が多いため、条件面を厳しくチェックし、不利な条件なら断る判断も必要です。
- 直接雇用パートと契約社員はどう違う?
-
パートは短時間勤務が前提で時給制、契約社員はフルタイムに近く月給制が多い。待遇は契約社員の方が若干有利な傾向ですが、5年ルール(無期転換権)はどちらにも適用されます。
- 直接雇用オファーの時給交渉は可能ですか?
-
可能です。任意の直接雇用では労使交渉で労働条件が決まります。現在の派遣時給を根拠に希望額を提示し、「○円以上でないと受けられない」と明確に伝えるのが効果的です。
まとめ|時給だけで判断するな。3軸の損得計算で冷静に決めよう
派遣から直接雇用パートで時給が下がる――。そのオファーを受けるか断るかは、時給だけでは決められません。
- 年収・福利厚生・安定性の3軸で計算
- 100円以内ダウン+賞与ありなら検討
- 200円以上ダウン+福利厚生なしなら断る
- 条件はすべて書面で確認する
- 断っても選択肢はたくさんある
マージン率20〜30%の消失で時給が下がるのは構造的に当然。しかし賞与・退職金・有給・安定性を含めた年収ベースでは逆転するケースもあることを忘れないでください。迷ったら一人で抱えず、派遣会社のキャリアコンサルタントに相談してみてください。エフネクストでは無料で損得シミュレーションのお手伝いもしています。
参考URL一覧
- 非正規労働者の権利実現全国会議「直接雇用の打診と時給下落」(弁護士回答):https://www.hiseiki.jp/haken2018/qanda27.php
- KCTP「直接雇用リスク7選・紹介手数料・マージン構造」:https://www.kctp.co.jp/haken/kiso/3822/
- クラウドワークスTimes「直接雇用の紹介料相場と法的要件」:https://crowdworks.jp/times/topics/28792/
- CareeReco「派遣先から直接雇用を提案された時の注意点」:https://hakenreco.com/hikinuki-tyokusetukoyou
- jobseek「直接雇用チェックポイント3選」:https://jobseek.ne.jp/work-style/haken/direct-employment/
- 株式会社エフネクスト「紹介予定派遣は主婦の味方」:https://f-next.co.jp/mamahaken/41/
- 株式会社エフネクスト「派遣の契約更新なし対処法」:https://f-next.co.jp/mamahaken/55/











