行政書士の年収とは、勤務・独立開業・ダブルライセンスなど働き方によって大きく変わる、行政書士の1年間の収入のことです。
「平均年収591万円」という数字が有名ですが、これは令和6年調査の値で、最新(令和7年調査)では583.3万円に更新されています。しかもどちらも勤務型に偏った統計で、85.2%を占める自営・フリーランスの実態は反映されていません。開業年数別や働き方別の公的な所得統計は存在しないため、以下で紹介するレンジは転職サイト・予備校等の媒体上の目安にすぎませんが、それでも「平均○○万円」の一枚看板よりは現実的な見取り図が描けるはずです。
この記事のポイント
- 最新は583.3万円・勤務偏り
- 約85%が独立開業
- 勤務レンジは媒体上の目安
- 独立は二極化する
- 1000万超は約9%
この記事を書いた人


2013年に「ビジネス実務法務検定2級」と独学で「行政書士」試験に合格。この資格を活かし、法務やコンプライアンスの視点からも安心できる情報発信を心がけています。
【結論】行政書士の年収は「働き方」で大きく違う

先に結論です。行政書士の年収を一言で語るのは危険です。勤務か独立か、どの分野を扱うかで、実態はまったく別物になります。
「平均年収591万円」を鵜呑みにしない
よく引用される平均年収の数字には、大きな落とし穴があります。厚生労働省の統計は雇用されている行政書士のデータが中心で、独立開業者の収入は含まれていません(厚生労働省 職業情報提供サイトjobtagをもとにした伊藤塾の分析)。この点を押さえずに「591万円もらえる」と考えると、現実とズレます。
勤務なら250〜500万円が現実的
行政書士事務所に勤務する場合、求人媒体等でよく示される目安は250〜500万円ほどです(公的統計ではなく、媒体・時期により幅があります)。安定はしますが、士業の中では控えめ。企業の法務・総務として働く場合は400〜650万円程度の求人も見られます。まずは「勤務は安定・中程度」と理解しておきましょう。
独立は「二極化」する——ここが本質
独立開業がいちばん振れ幅が大きい働き方です。開業初期は収入が低く、専門特化と営業次第で大きく伸びる可能性がある一方、伸びない場合もあります。開業年数別の公的な所得統計はなく、「1〜2年目は○百万円」といった具体的レンジは媒体上の語られ方にすぎません。伸びる人と伸びない人に分かれる——これが独立の現実です。仕事の中身は行政書士の仕事内容・独占業務で確認できます。


正直、平均値は当てになりません。大事なのは分布の形です。
行政書士「平均年収591万円」の正体——3つの統計を読み解く


年収の数字は、出どころによって大きく違います。よく出回る3つの統計を、対象範囲とセットで読み解きましょう。ここを理解すれば、もう数字に振り回されません。
| 統計 | 数字 | 対象範囲(母集団) |
|---|---|---|
| 厚労省jobtag | 583.3万円(令和7年調査) ※令和6年調査では591万円 | 雇用される行政書士が中心 |
| MS-Japan調査 | 平均537万円 | 転職サービス登録者(勤務寄り) |
| 日行連 実態調査 | 8割が年商500万円未満 | 会員(副業・非稼働も含む) |
jobtagは「勤務型」の数字
厚労省jobtagの平均は、2026年7月時点で583.3万円(令和7年賃金構造基本統計調査ベース・平均41.7歳)。ネットでよく見る591万円は令和6年調査の値で、すでに更新されています。いずれも賃金構造基本統計調査=雇用労働者のデータで、「他に分類されない専門的職業従事者」という他職種と同じ区分に含まれます。同じjobtagでも行政書士の85.2%は自営・フリーランスと示されており、その収入は反映されていません。「勤務者の目安」として読むのが正解です。
「8割が年商500万円未満」の正しい読み方
日本行政書士会連合会の実態調査では、年間売上高500万円未満が約78%です(アルクの解説)。ただし注意点があります。これは「売上」であって「年収(手取り)」ではない点です。回答者の稼働状況別の集計は公表されていないため、専業層に絞った数字がどうなるかは統計からは分かりません。
行政書士の年収1,000万円超は「約9%」
高収入層のデータもあります。MS-Japanの2023年の調査では、年収1,000万円以上の行政書士が約9%(MS-Japan 雇用実態レポート)。ただしこれは同社の転職サービス登録者が対象で、勤務寄りの層に偏った母集団です。独立開業者の分布そのものではない点は、押さえておきたいところ。それでも10人に1人弱が大台を超えており、上を目指せる資格だとは言えます。



同じ「平均年収」でも母集団が違えば別物。数字は範囲で読みます。
勤務行政書士の年収リアル


まずは安定志向の勤務から見ていきます。勤務先によって水準が変わるため、どこで働くかが年収を左右します。
- 行政書士事務所勤務:250〜500万円
- 企業の法務・総務:400〜650万円
- 年代で右肩上がりの傾向
事務所勤務は「実務を学ぶ場」と割り切る
行政書士事務所の勤務求人はもともと少なく、給与も控えめです。年収より「独立前に実務と人脈を仕込む場」と位置づけるのが賢い使い方。ここで建設業許可や入管業務の実務を覚え、数年後の独立につなげる人が多くいます。
企業内なら「法務」で年収が上がる
企業の法務・総務で働くと、水準は一段上がります。MS-Japanの調査でも一般企業の法務は平均632万円と、法律事務所勤務の472万円を上回ります。求人を探すときは「行政書士」ではなく「法務」「コンプライアンス」で検索するのがコツです。
年代別では40代後半以降が伸びる
年収は年齢とともに上がる傾向があります。MS-Japan調査では30代前半418万円、40代前半545万円、40代後半以降653万円という数字が示されています。ただしこれは転職サービス登録者の年代別の横断データで、勤務先・役職などの条件は揃えられていないため、「続ければ昇給する」という因果を示すものではありません。年代による差がある、という相関として読むのが正確です。



実務経験は年収に直結します。まず現場に入るのが近道です。
独立開業の年収リアル——二極化の構造


行政書士の最大の魅力は、実務未経験でも独立開業できることです。ただし収入は年数と戦略で大きく変わります。時系列で見ていきましょう。
1〜2年目は「100〜300万円」の我慢どき
開業直後は、収入が安定しない時期を通る人が多いといわれます。開業初期は集客の仕組みづくりに注力する期間と捉え、生活費を確保できる態勢を用意しておくことが、続けられるかの分かれ目になります(開業年数別の公的所得統計はありません)。
3〜5年目で「500〜800万円」が射程に
顧客基盤が安定し、紹介やリピートが増える3〜5年目になると景色が変わります。建設業許可の更新(5年ごと)や在留資格の更新など、定期的に発生する業務を抱えると収入が安定します。ここで年収500〜800万円が現実的な射程に入ってきます(目安)。
開業費用は「45〜95万円」と低い
独立のハードルが低いのも行政書士の強みです。登録料25〜35万円を含め、開業費用は45〜95万円ほど、自宅開業なら60万円程度で始められます。弁護士や税理士に比べて初期投資が小さいぶん、失敗しても傷が浅い。挑戦しやすい独立といえます。



最初の1年をどう食いつなぐか。ここが独立の分岐点だとよく語られます。
年収を分ける3つの変数と稼げる分野


なぜ同じ資格でこれほど差がつくのか。年収を左右するのは、突き詰めると3つの変数です。ここを意識するだけで、戦略が変わります。
変数は「働き方×専門分野×営業力」
年収は、この3つの掛け算で決まります。勤務か独立かの働き方、どの分野を選ぶか、そして仕事を取る営業力。どれか1つでも欠けると伸び悩みます。逆に、専門を絞り営業を続ける独立者は、平均をはるかに超えていきます。
高単価は「入管・建設業・相続」
分野選びは年収に直結します。在留資格(入管)は1件10〜20万円で更新リピートあり、建設業許可は5年ごとの更新需要、相続は高齢化で増加中です(日本行政書士会連合会「令和7年度報酬額統計調査」/日行連公式)。継続案件を持てる分野ほど、収入が安定します。
ダブルライセンスで差別化する
もう一段上を狙うなら他資格との組み合わせが有効です。行政書士×社労士は許認可と労務のワンストップで建設業に強く、年収を押し上げます。相性のよい資格は行政書士と社労士のダブルライセンスで解説しています。専門を掛け合わせるほど、代わりのきかない存在になれます。





業界では「何でも屋」より「専門特化」が稼ぐ、が定石です。
「稼げない」と言われる理由の正しい読み方


「行政書士は稼げない」という声には理由があります。ただし、その多くはデータの読み違いです。事実を整理しておきましょう。
「売上」と「年収」を混同している
最大の誤解がこれです。「8割が年商500万円未満」は売上の話で、経費を引いた手取りとは別物。逆に、個人で経費が少なければ売上の多くが手元に残ります。売上と年収を区別せずに「稼げない」と決めつけるのは早計です。
「登録だけ・副業」の人が平均を下げる
母数の中身も重要です。資格は取ったが実働していない人、副業で少額だけ稼ぐ人も統計に含まれ、平均を押し下げています。専業で本気で取り組む層だけを見れば、実態はもっと上。数字の裏にある「誰が含まれているか」を見る視点が欠かせません。
結局は「営業できるか」で決まる
身も蓋もありませんが、これが真実です。実力より、仕事を取り続ける営業と集客の仕組みを作れるかで年収が決まります。待ちの姿勢では稼げず、HP・紹介・専門特化で動ける人が伸びます。資格は入場券であって、稼ぎを保証するものではないと理解しておきましょう。



開業初期こそ営業の手を止めない——実務家がよく口にする鉄則です。
よくある質問(FAQ)
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- 行政書士の平均年収は本当に591万円ですか?
-
厚労省jobtagの数字は583.3万円(令和7年賃金構造基本統計調査ベース・2026年7月時点)です。よく見る591万円は令和6年調査の旧値。いずれも雇用されている行政書士中心のデータで、85.2%を占める自営・フリーランスは含まれません。しかも他職種と同じ区分に混ざっています。全体の実態を表す平均ではなく、「勤務者の目安」と理解するのが正確です。
- 行政書士は本当に稼げないのですか?
-
「8割が年商500万円未満」という調査(日行連・平成30年実態調査)はありますが、これは売上であり手取りとは別で、副業や非稼働の人も含まれます。一方でMS-Japanの調査(転職サービス登録者ベース・2023年)では年収1,000万円超が約9%。母集団が違うので単純比較はできませんが、上振れする層が実在することは確かです。稼げるかは働き方と営業力次第で、資格そのものが稼ぎを保証するわけではありません。
- 勤務と独立、年収が高いのはどちらですか?
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安定は勤務、上限は独立です。勤務は250〜650万円の範囲で安定しますが上限は限られます。独立は初期こそ100〜300万円と苦しいものの、専門特化と営業がうまくいけば1,000万円超も可能です。安定を取るか上限を取るかで選び方が変わります。
- 開業して何年で軌道に乗りますか?
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目安として1〜2年目は100〜300万円と苦しく、3〜5年目で500〜800万円が射程に入ります。建設業許可や在留資格など更新のある業務を積み上げ、リピート案件を確保できるかが軌道に乗るカギです。初期の生活費確保が続けられるかを左右します。
- 稼げる業務分野はどこですか?
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入管業務(在留資格)、建設業許可、相続・遺言、補助金申請などが高単価・継続案件で稼ぎやすい分野です。特に更新needが発生する入管や建設業はリピートで収入が安定します。1つの分野に専門特化するほど単価と信頼が上がります。
- 女性でも行政書士で食べていけますか?
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可能です。年収は性別より働き方・専門分野・営業力で決まります。相続や離婚、入管など丁寧な対応が評価される分野で活躍する女性行政書士も多くいます。在宅開業もしやすく、ライフスタイルに合わせた働き方を組みやすい資格です。
- 年収を上げるには何をすればいいですか?
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専門分野を1つに絞り「〇〇の専門家」になること、営業・集客の仕組み(HP・紹介・交流)を作ること、社労士や宅建などのダブルライセンスで差別化することの3つが王道です。何でも屋を避け、継続案件を持てる分野に集中するのが近道です。
- 未経験・実務経験なしでも独立できますか?
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できます。実務未経験でも即独立開業できるのが行政書士の特徴です。ただし独立初期は収入が不安定なため、事務所勤務で実務と人脈を仕込んでから独立する人も多くいます。開業前に生活費と集客の準備をしておくと安心です。
まとめ|年収は「平均」でなく「自分の働き方」で見る


「行政書士は稼げる/稼げない」という単純な問いに、もう惑わされる必要はありません。平均591万円は勤務型の目安にすぎず、実態は働き方・専門分野・営業力で大きく割れる。あなたが見るべきは、全体の平均ではなく、自分が選ぶ道で狙える現実的なレンジです。
- 平均でなくレンジで見る
- 売上と年収を区別
- 専門特化と営業が鍵
今日できる一歩は、自分が「勤務で安定」か「独立で上限」かをざっくり決め、興味のある業務分野を1つ挙げてみること。資格の全体像は行政書士とは・なるには、学習の進め方は行政書士完全ガイドで確認できます。




参考URL一覧
- 日本行政書士会連合会(報酬額統計・公式):https://www.gyosei.or.jp
- 伊藤塾コラム・行政書士の年収(jobtag分析):https://column.itojuku.co.jp/gyosei/level/nenshu
- 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)・行政書士:https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/85
- アルク・行政書士の年収の現実:https://www.alc.co.jp/license/gyoseishoshi/nenshu
- MS-Japan・行政書士の雇用実態レポート:https://company.jmsc.co.jp/info/2023/1109_11887.html
- TAC・行政書士の平均年収:https://www.tac-school.co.jp/kouza_gyosei/gyosei_sk_idx/contents_nensyu.html










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