退職した会社から、失業保険の申請に必要な「離職票」や、確定申告・転職先での手続きに必要な「源泉徴収票」が届かず、お困りではありませんか?結論から申し上げます。これらの重要書類を、退職者からの請求に応じて発行することは、法律で定められた会社の「義務」です。意図的に送らない、あるいは遅延させる行為は、明白な法律違反にあたります。この記事では、あなたがその違法な状況を解決し、正当な権利を行使するための、具体的な催促方法(メール文例から内容証明郵便まで)と、会社が応じない場合の最終手段(ハローワーク・税務署への相談)まで、ステップバイステップで徹底解説する【完全解決マニュアル】です。
この記事のポイント
- 書類の発行は会社の「義務」:離職票(雇用保険法)、源泉徴収票(所得税法)の発行は、法律で定められた会社の義務です。あなたの「お願い」ではありません。
- 発行期限の目安を知る:離職票は「退職後10日前後」、源泉徴収票は「退職後1ヶ月以内」が、一般的な発行期限です。
- 催促は段階的に:まずは「丁寧なメール・電話」から始め、応じなければ「内容証明郵便」で法的な圧力をかけ、それでもダメなら「公的機関」を動かします。
- 最強の味方は「ハローワーク」と「税務署」:これらの公的機関は、あなたに代わって会社に指導・督促を行ってくれる、非常に強力な味方です。
- 記録があなたを守る:会社とのやり取り(電話の日時、担当者名、メールなど)は、全て記録に残しておきましょう。いざという時の証拠になります。
なぜ離職票・源泉徴収票の書類が「命」より重要なのか

なぜ、私たちはこれらの書類が届かないと、これほどまでに困るのでしょうか。それぞれの役割を正確に理解し、その重要性を認識しましょう。
- 離職票:失業保険申請に絶対必要
- 源泉徴収票:転職先での年末調整・確定申告に必須
離職票(正式名称:雇用保険被保険者離職票)
役割:あなたが失業保険(基本手当)の給付を申請するために、絶対に必要な書類です。これがないと、ハローワークで手続きを開始することすらできません。
法的根拠:雇用保険法に基づき、会社は、退職者が希望した場合、速やかに離職票を発行する義務があります。ハローワークへの手続き期限は「退職日の翌々日から10日以内」と定められており、その後、会社からあなたへ送付されます。
【関連】 離職票を使って、失業保険を申請する全手順はこちら。 ➡️ 失業保険はいつからいくらもらえる?申請手続きと受給額計算法
源泉徴収票
役割
- 転職先での年末調整:年内に再就職した場合、新しい会社に提出が必須です
- 自分での確定申告:年内に再就職しなかった場合、これがないと確定申告ができず、払い過ぎた税金の還付を受けられません
法的根拠:所得税法に基づき、会社は、退職後1ヶ月以内に、退職者に源泉徴収票を交付する義務があります。
これらの書類がなければ、あなたの退職後の生活設計は、根底から崩れてしまいます。
催促アクションプラン3ステップ
会社が書類を送ってこない理由は、「単なる遅延」「担当者の知識不足」「悪意ある嫌がらせ」など様々です。まずは、穏便な方法から、段階的にプレッシャーを強めていきましょう。
- Step1:丁寧なメール・電話で「確認」する(まずは穏便に)
- Step2:内容証明郵便で「請求」する(法的圧力)
- Step3:公的機関を動かし、「督促」してもらう(最終手段)
Step1:丁寧なメール・電話で「確認」する(まずは穏便に)
いきなり「法律違反だ!」と責めるのは得策ではありません。まずは、「失念しているだけかもしれない」というスタンスで、丁重に確認の連絡を入れましょう。
【催促メール文例:離職票の場合】
件名:離職票発行状況のご確認(元〇〇部 氏名)
株式会社〇〇 人事部 〇〇様
お世話になっております。〇月〇日付で退職いたしました、(自分の氏名)です。
退職後の手続きのため、離職票が必要なのですが、その後の発行状況はいかがでしょうか。
お忙しいところ大変恐縮ですが、おおよその発送予定日をお教えいただけますと幸いです。
何卒よろしくお願い申し上げます。
(自分の氏名)
住所:〒〇〇〇-〇〇〇〇
電話番号:〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇
【ポイント】
- 感情的にならず、あくまで「事務的な確認」として連絡する
- いつまでに必要かを具体的に伝えると、相手も優先順位を上げやすくなります
- 電話で連絡した場合も、「いつ、誰と、どんな話をしたか」を必ずメモに残しておきましょう
Step2:内容証明郵便で「請求」する(法的圧力)
Step1の連絡から1週間以上経っても何の反応もない、あるいは不誠実な対応をされた場合は、次のステージに進みます。
【内容証明郵便とは?】
「いつ、誰が、誰に、どんな内容の文書を送ったか」を、日本郵便が公的に証明してくれるサービス。「あなたの請求を、会社は確かに受け取りましたよ」という、法的に揺るぎない証拠になります。
これは、単なる手紙ではなく、「これ以上、不誠実な対応を続けるなら、こちらも法的措置を検討します」という、強力な意思表示(最後通告)です。ほとんどの会社は、この郵便が届いた時点で、事の重大さを認識し、すぐに対応します。
【内容証明郵便 文例】
離職票交付請求書
拝啓 私は、貴社を令和〇年〇月〇日に退職いたしました(氏名)です。
退職に伴い、雇用保険法第76条3項に基づき、離職票の交付を請求しておりましたが、本日現在、未だ交付されておりません。
つきましては、本書面到達後、7日以内に、下記の住所まで速やかに離職票を交付(郵送)していただくよう、改めて請求いたします。
誠に遺憾ながら、万が一、上記期限内にご対応いただけない場合は、ハローワークへの届出等、所定の手続きを取らざるを得ませんので、ご承知おきください。
敬具
令和〇年〇月〇日
住所:〒〇〇〇-〇〇〇〇 氏名:〇〇 〇〇
被通知人(相手方)
会社所在地 会社名 代表取締役 〇〇 〇〇 殿
【出し方】
- 同じ内容のものを3部作成(送付用、郵便局保管用、自分用)
- 集荷を行っている郵便局の窓口で、「内容証明郵便でお願いします」と伝える。「配達証明」も必ず付けましょう
Step3:公的機関を動かし、「督促」してもらう(最終手段)
内容証明を送ってもなお、会社が書類を発行しない。そんな悪質なケースでは、いよいよ公的機関の出番です。
離職票が来ない場合 → ハローワーク
- 相談先:あなたの住所を管轄するハローワーク
- 手続き:
1. ハローワークの「雇用保険適用課」などの窓口へ行く
2. 「退職した会社が、離職票を発行してくれない」と相談する
3. これまでの経緯(催促のメールや、内容証明郵便の控えなど)を提示する - どうなる?:相談を受けたハローワークは、職権で、会社に対して離職票の発行を督促してくれます。公的機関からの指導を無視できる会社は、まずありません。状況によっては、ハローワークが会社の代わりに離職票を発行してくれる場合もあります
源泉徴収票がもらえない場合 → 税務署
- 相談先:退職した会社の所在地を管轄する税務署
- 手続き:
1. 税務署に行き、「源泉徴収票不交付の届出手続」を行いたいと伝える
2. 「源泉徴収票不交付の届出書」という用紙に、会社の情報を記入して提出する
3. これまでの経緯や、給与明細など、給与額がわかる資料があれば、添付するとスムーズです - どうなる?:届出を受けた税務署は、会社に対して行政指導を行います。税務署からの指導は、会社にとって非常に重いものです。ほぼ確実に、源泉徴収票が発行されます
【関連】 会社とのやり取り自体が、もはや苦痛でしかない場合は、専門家に任せる選択肢もあります。 ➡️退職代行とは?利用すべき人の診断チェックと基本知識
書類別対処法の詳細ガイド
離職票と源泉徴収票では、対処法や相談先が異なります。それぞれの特性を理解して、適切な対応を取りましょう。
離職票が届かない場合の特別対応
離職票は失業保険受給に直結するため、ハローワークも積極的に対応してくれます。以下の情報を準備して相談に行きましょう。
- 退職日:正確な退職日を伝える
- 会社の情報:正式な会社名、所在地、担当者名
- これまでの経緯:催促した日時、方法、相手の反応
- 雇用保険被保険者証:手元にある場合は持参
源泉徴収票がもらえない場合の税務署対応
源泉徴収票については、「源泉徴収票不交付の届出書」の提出が最も効果的です。この届出により、税務署が会社に直接指導を行います。
届出に必要な情報
- 会社の法人番号・所在地
- 在職期間
- 給与の総額(給与明細などで確認)
- 請求した経緯
緊急時の代替手段
どうしても書類が入手できない場合の代替手段も知っておきましょう。
離職票の代替:給与明細や雇用契約書があれば、ハローワークで事情を説明することで失業保険の手続きを進められる場合があります。
源泉徴収票の代替:給与明細の合計額から税額を計算して確定申告することも可能です。税務署で相談しましょう。
| 書類名 | 発行期限 | 相談先 | 対処法 |
|---|---|---|---|
| 離職票 | 退職後10日前後 | ハローワーク | 雇用保険適用課に相談 |
| 源泉徴収票 | 退職後1ヶ月以内 | 税務署 | 不交付届出書を提出 |
よくある質問
- 会社が倒産してしまい、連絡が取れません。
-
離職票については、ハローワークで事情を説明すれば、破産管財人などを通じて手続きを進めるか、賃金台帳などがなくても、あなたの給与明細などを基に、失業保険の受給資格を認定してくれる場合があります。源泉徴収票については、破産管財人に連絡を取り、発行を依頼することになります。
- 会社と揉めて辞めたので、連絡するのが気まずいです。
-
気まずい気持ちは分かりますが、書類の請求はあなたの正当な権利です。割り切って、本記事で紹介したメール文例などを使い、事務的に連絡しましょう。どうしても無理な場合は、弁護士や退職代行に依頼するのも一つの手です。
- 催促にかかる費用は、会社に請求できますか?
-
内容証明郵便の費用(1,500円程度)などを、会社に請求することは難しいです。しかし、それによって得られる失業保険や、税金の還付金を考えれば、必要経費と割り切るのが賢明です。
まとめ:嫌がらせに泣き寝入りは、絶対にしない。知識はあなたの武器になる。
退職後に必要な書類が届かないというトラブルは、あなたの新しい人生のスタートを妨害する、非常に悪質な行為です。しかし、あなたは決して無力ではありません。日本の法律と、ハローワークや税務署といった公的機関は、常に誠実な労働者の味方です。
この記事で得た知識を武器に、感情的にならず、法的な手続きに則って、あなたの正当な権利を堂々と主張してください。その冷静で毅然とした行動が、理不尽な状況を打ち破り、あなたを明るい次のステージへと導いてくれるはずです。
■ 公式/参考URL一覧
- e-Gov法令検索 – 雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)
- 離職票の交付が会社の義務であることを示す、第76条などの法的根拠として参照。
- e-Gov法令検索 – 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)
- 源泉徴収票の交付が会社の義務であることを示す、第226条の法的根拠として参照。
- 国税庁 – [手続名]源泉徴収票不交付の届出手続
- 源泉徴収票がもらえない場合の最終手段である「源泉徴収票不交付の届出手続」について、国税庁の公式サイトを基に、正確な手続き方法を解説するために参照。

