実務者研修修了者の平均月給は327,260円で、無資格者(290,620円)と比べて月約3.7万円(年間約44万円)高い水準です(厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」)。
ただし、初任者研修修了者(324,830円)との差は月約2,400円と小さいのが実情です。実務者研修の真価は「資格手当の差」ではなく、介護福祉士への受験資格が得られること、サービス提供責任者になれること、そして2026年6月の処遇改善加算改定を最大限に活かせるキャリアパスにあります。この記事では、厚労省の最新データを基に、正社員・派遣それぞれのパターンで年収がどう変わるかをシミュレーションします。
この記事のポイント
- 実務者研修の平均月給は327,260円(厚労省R6)
- 無資格との差は月3.7万円・年44万円
- 資格手当は53.6%の職場で「手当なし」
- 2026年6月改定で全従事者に月1万円の賃上げ
- 派遣なら時給差100〜200円で年収逆転も
厚労省データで見る実務者研修修了者の平均給与【令和6年度最新】
厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」(2025年12月1日公表)は、介護職の給与を知るための最も信頼性の高い公的統計です。処遇改善加算を取得している事業所の介護職員(月給・常勤)を対象としたこのデータから、保有資格別の平均給与を正確に把握しましょう。
保有資格別の平均月給・年収一覧表
資格を上位に進めるほど平均給与は着実に上がります。以下は令和6年度(2024年9月時点)の最新データです。
| 保有資格 | 平均月給 | 年収換算(×12) | 無資格との月給差 | 平均勤続年数 |
|---|---|---|---|---|
| 無資格 | 290,620円 | 約349万円 | ― | 5.8年 |
| 初任者研修 | 324,830円 | 約390万円 | +34,210円 | 8.8年 |
| 実務者研修 | 327,260円 | 約393万円 | +36,640円 | 6.9年 |
| 介護福祉士 | 350,050円 | 約420万円 | +59,430円 | 10.4年 |
(出典:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」統計表第89表。平均給与額は基本給+手当+一時金(4〜9月支給額の1/6)。)
実務者研修と初任者研修の差は月2,430円の現実
厚労省データによると、実務者研修修了者の平均月給327,260円に対し、初任者研修修了者は324,830円です。その差はわずか月2,430円(年間で約3万円)にとどまります。
「たった3万円?それなら実務者研修を取る意味がないのでは?」と思うかもしれません。しかし、この数字には重要な背景があります。実務者研修修了者の平均勤続年数は6.9年と、初任者研修修了者(8.8年)よりも約2年短いのです。つまり、勤続年数が短いにもかかわらず月給が上回っているという見方もできます。
そして何より、実務者研修の真価は「月給の差」ではなく、この先にある介護福祉士への道を開くことにあります。介護福祉士まで進めば月給は350,050円となり、無資格から月約6万円・年約71万円のアップです。
無資格→介護福祉士で月5.9万円アップの全体像
介護職のキャリアパスを「給料」の視点で見ると、最大の給料ジャンプが起きるのは「無資格→初任者研修」と「実務者研修→介護福祉士」の2つのタイミングです。
無資格→初任者研修で月3.4万円アップ、初任者→実務者で月0.24万円アップ、実務者→介護福祉士で月2.3万円アップ。つまり、実務者研修は「給料が劇的に上がるステップ」ではなく、「介護福祉士という大幅アップへの必須通過点」という位置づけです。
実務者研修と初任者研修の違いについて詳しくは「実務者研修と初任者研修の違いを徹底比較」をご覧ください。
実務者研修の資格手当の実態|53.6%の職場で「手当なし」
「実務者研修を取れば毎月1万円以上の資格手当がもらえる」と期待する方は多いですが、実態はもう少し厳しいものです。レバウェル介護(旧きらケア)が実務者研修取得者69人を対象に行ったアンケートでは、半数以上が資格手当ゼロという結果が出ています。
資格手当がつく場合の相場は月3,000〜10,000円
きらケアの調査では、実務者研修の資格手当は53.6%の職場で「手当なし」と回答されています。支給される場合でも、月5,000円以上の手当がつく職場は全体の15.9%にとどまります。
| 資格手当の金額 | 割合 |
|---|---|
| 手当なし | 53.6% |
| 1,000〜4,999円 | 30.4% |
| 5,000〜9,999円 | 10.1% |
| 10,000円以上 | 5.8% |
(出典:レバウェル介護(旧きらケア)実務者研修取得者アンケート(n=69)。調査人数が少ないため参考値としてご覧ください。)
「月15,000円の資格手当がもらえる」という情報を見かけることもありますが、これは介護福祉士レベルの手当と混同している可能性が高いです。実務者研修単体で月15,000円の手当がつく職場はごく一部に限られます。
給料アップの本当のカギは「資格手当」ではない
では、実務者研修を取っても給料は上がらないのかというと、そうではありません。実務者研修による収入アップの本質は「資格手当」ではなく、次の3つのキャリアパスを開けることにあります。
- 介護福祉士への受験資格(月給+2.3万円)
- サービス提供責任者への昇進(役職手当)
- 派遣での時給アップ(100〜200円の直接反映)
収入を伸ばす3つの戦略
戦略①:介護福祉士まで進む。厚労省データで月給差が最も大きいのは「実務者研修→介護福祉士」のステップ(月+22,790円・年+27万円)です。実務者研修はこの道への必須条件であり、3年の実務経験と並行して取得するのが最も効率的なルートです。
戦略②:サービス提供責任者になる。訪問介護事業所のサ責は、ヘルパーの管理・指導を担うポジションで、役職手当により年収が大きく上がる可能性があります。サ責になるには実務者研修の修了が最短ルートです(役職手当の金額は事業所により異なるため、お勤め先に確認してください)。
戦略③:派遣で時給を直接上げる。正社員の場合、資格手当がゼロの職場も多いですが、派遣では保有資格が時給に直接反映されます。次のセクションで派遣のシミュレーションを詳しく見ていきましょう。
【正社員編】施設別の平均月給シミュレーション
実務者研修修了者の月給は、働く施設の種類によっても大きく異なります。厚労省の令和6年度データから、主要な施設タイプ別の平均月給をまとめました。
施設別の実務者研修修了者の平均月給
| 施設タイプ | 実務者研修の平均月給 | 無資格の平均月給 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 訪問介護事業所 | 348,020円 | (配置要件上なし) | ― |
| 介護老人福祉施設(特養) | 348,210円 | 303,410円 | +44,800円 |
| 介護医療院 | 335,560円 | 286,270円 | +49,290円 |
| 介護老人保健施設(老健) | 325,800円 | 305,230円 | +20,570円 |
| 通所介護(デイサービス) | 294,960円 | 280,090円 | +14,870円 |
| 通所リハビリ(デイケア) | 292,780円 | 273,690円 | +19,090円 |
(出典:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」p.161。)
特養・訪問介護で働く実務者研修修了者の月給は約34.8万円と、全体平均(327,260円)を約2万円上回っています。施設選びも年収に大きく影響する要素です。
介護福祉士にステップアップした場合の月給変化
実務者研修修了後に介護福祉士を取得すると、平均月給は350,050円(年収約420万円)まで上がります。実務者研修からの上昇幅は月22,790円・年約27万円です。
さらに注目すべきは、勤続10年以上の介護職員の平均月給は359,040円であることです。介護福祉士+勤続10年以上は、処遇改善加算の「経験・技能のある介護職員」として重点配分を受けやすくなるため、長期的な収入アップが期待できます。
介護福祉士国家試験の情報は「介護福祉士国家試験の全情報|日程・合格率」をご確認ください。
サービス提供責任者になった場合の年収
実務者研修を修了するとサービス提供責任者(サ責)の要件を満たすことができます。サ責はヘルパーの管理・指導やケアマネとの調整を担うコーディネーター職で、通常のヘルパーよりも高い給与設定になっているケースが多いです。
サ責の役職手当や年収は事業所により大きく異なるため、具体的な金額を一律に示すことは難しいですが、訪問介護事業所の実務者研修修了者の平均月給(348,020円)を基準に考えると、サ責手当が加わることで年収400万円台も十分に射程圏内といえるでしょう。
【派遣編】時給シミュレーション|派遣なら資格の恩恵が直接的
正社員の場合、資格手当がゼロの職場が半数以上ですが、派遣では保有資格が時給に直接反映されるため、資格取得の恩恵をダイレクトに感じやすい構造になっています。
資格別の派遣時給の目安
派遣の時給は派遣会社・エリア・施設・経験により異なりますが、一般的な傾向として初任者研修と実務者研修の間に100〜200円程度の時給差がつくことが多いです。
エフネクストの介護派遣では、資格や経験に応じて時給1,900円〜2,100円の高水準な求人が多数あります。東京都内や神奈川県の主要エリアでは、実務者研修修了者・経験者向けの案件として時給1,900円以上が一般的です。
なお、厚労省「令和6年度調査」から算出した実務者研修取得者(時給制・非常勤)の平均時給は約1,552円ですが、これは全国平均であり、都市部の派遣はこれより高い水準で推移しています。時給相場の詳細は「介護職の時給相場(東京・神奈川・埼玉・千葉)」をご確認ください。
月収・年収シミュレーション(フルタイムの場合)
派遣でフルタイム勤務(1日8時間×月22日)した場合の月収・年収をシミュレーションします。
| 想定時給 | 月収(8h×22日) | 年収(×12) |
|---|---|---|
| 1,700円 | 299,200円 | 約359万円 |
| 1,800円 | 316,800円 | 約380万円 |
| 1,900円 | 334,400円 | 約401万円 |
| 2,000円 | 352,000円 | 約422万円 |
| 2,100円 | 369,600円 | 約444万円 |
(※上記は基本給のみの計算。夜勤手当・残業代は含んでいません。実際の収入はこれより高くなるケースが多いです。)
時給1,900円(エフネクストの一般的な水準)で計算すると月収33.4万円・年収約401万円。正社員の全国平均(327,260円)を上回る水準です。派遣は時給に資格の恩恵が直接反映されるため、「資格手当がつかない正社員」よりも収入が高くなるケースも珍しくありません。
受講費用の回収期間はどれくらい?
実務者研修の受講費用(初任者研修持ちで約6〜12万円)は、派遣の時給アップで短期間に回収可能です。
仮に時給が100円上がった場合、フルタイムなら月17,600円(8h×22日×100円)のプラスです。受講費用10万円なら約6ヶ月で回収できる計算になります。時給差が150円なら約4ヶ月、200円なら約3ヶ月です。
さらに専門実践教育訓練給付金(最大80%還付)を利用すれば、実質負担は2〜3万円程度まで下がるため、わずか1〜2ヶ月で元が取れます。費用の詳細は「実務者研修の費用を保有資格別に解説」をご覧ください。
2026年6月の処遇改善加算改定|全従事者月1万円+αの内訳
2026年6月に施行される臨時の介護報酬改定(改定率+2.03%)では、介護従事者全体の処遇改善が実施されます。「有資格者だけが得をする」改定ではないことを、正確に理解しておきましょう。
改定の3つの柱|全従事者1万円・生産性向上上乗せ・対象拡大
2026年6月改定のポイントは「全介護従事者が月額1万円の賃上げ対象」であることです。介護職員だけでなく、事務職員等も含む全従事者が対象となり、加算名称も「介護従事者処遇改善加算」に変更されます。
月額最大1.9万円の内訳は以下のとおりです。
- 基本の賃上げ:月額約1万円(全従事者対象)
- 生産性向上の上乗せ:月額約7,000円(ICT導入等に取り組む事業所)
- 定期昇給分:月額約2,000円
(参照:社保審・介護給付費分科会 審議報告2026年1月16日、GemMed報道)
1.9万円すべてが自動的に全員に支給されるわけではなく、事業所が取得している加算区分や配分方針によって個人差がある点には注意が必要です。改定の詳細は「賃上げ1.9万円はいつから?」もあわせてご確認ください。
処遇改善加算の配分ルール|「経験・技能のある介護職員」の正確な要件
処遇改善加算には「経験・技能のある介護職員」への重点配分ルールがありますが、このグループの基本要件は「介護福祉士の資格を持ち、勤続10年以上の職員」です(厚生労働省「処遇改善加算の基本的考え方」)。
実務者研修の修了だけでは、通常このグループには分類されません。事業所の裁量で要件を調整できる部分もありますが、あくまで介護福祉士資格が前提です。実務者研修は介護福祉士受験の必須条件であるため、このグループに入るためのキャリアパスの第一歩という位置づけです。
実務者研修→介護福祉士が処遇改善の恩恵を最大化する理由
まとめると、実務者研修は「取得した瞬間に給料が激増する資格」ではなく、「介護福祉士→経験・技能グループ→処遇改善加算の重点配分」という長期的な収入アップの起点となる資格です。
2026年6月改定では全従事者に月1万円の賃上げが実施されますが、介護福祉士+勤続10年以上の職員はさらに手厚い配分を受けやすくなります。「今」実務者研修を取得し、3年の実務経験と並行して介護福祉士を目指すことで、2030年代には処遇改善の恩恵を最大限に受けられるキャリアが開けます。
介護資格の取得ルートの全体像は「介護資格はどの順番で取るのが正解?」で確認できます。
よくある質問
- 実務者研修を取ると給料はいくら上がりますか?
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厚労省の令和6年度調査によると、実務者研修修了者の平均月給は327,260円で、無資格者(290,620円)より月約3.7万円高い水準です。ただし初任者研修修了者(324,830円)との差は月約2,400円にとどまります。実務者研修の真価は介護福祉士への受験資格が得られることにあり、介護福祉士まで進めば月約5.9万円のアップが見込めます。
- 実務者研修の資格手当の相場はいくらですか?
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きらケアの調査では、実務者研修の資格手当は53.6%の職場で「手当なし」です。支給される場合の相場は月3,000〜10,000円程度です。ただし、すべての事業所が明確な資格手当を設けているわけではなく、基本給への反映や処遇改善加算として支給されるケースもあります。
- 2026年の賃上げは実務者研修にどう影響しますか?
-
2026年6月の臨時改定では全介護従事者に月額1万円の賃上げが実施されます。実務者研修修了者も無資格者も同じく対象です。ただし、従来から処遇改善加算には「経験・技能のある介護職員(介護福祉士+勤続10年以上)」への重点配分ルールがあるため、実務者研修→介護福祉士とキャリアアップすることで、将来的により大きな恩恵を受けられます。
- 正社員と派遣で給料の上がり方に違いはありますか?
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はい、構造が異なります。正社員は資格手当+処遇改善加算で還元されますが、53.6%の職場で資格手当がゼロのため、上がり方にばらつきがあります。派遣は保有資格が時給に直接反映されるため、資格取得の恩恵をダイレクトに感じやすい構造です。エフネクストでは時給1,900〜2,100円の案件が多数あります。
- 受講費用の元は取れますか?
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取れます。派遣で時給が100円上がった場合、フルタイム勤務で月17,600円のプラスとなり、受講費用10万円は約6ヶ月で回収できます。さらに専門実践教育訓練給付金(最大80%還付)を利用すれば実質負担は2〜3万円に下がり、1〜2ヶ月で元が取れる計算です。
- サービス提供責任者になると年収はいくらですか?
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サ責の年収は事業所により大きく異なりますが、訪問介護事業所の実務者研修修了者の平均月給は348,020円(厚労省R6)です。これにサ責の役職手当が加わるため、年収400万円台も射程圏内です。具体的な金額はお勤め先にご確認ください。
- 夜勤手当も上がりますか?
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施設によります。基本給や時給が上がると、それをベースに計算される割増賃金(夜勤手当・残業代)も連動して上がることがあります。また、実務者研修を持っていると「夜勤リーダー」を任され、リーダー手当がつく場合もあります。
- 実務者研修と介護福祉士の年収差はどのくらいですか?
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厚労省の令和6年度調査では、実務者研修修了者の平均月給327,260円に対し、介護福祉士は350,050円で、月約22,790円(年間約27万円)の差があります。介護福祉士はさらに処遇改善加算の重点配分対象にもなりやすいため、長期的な収入差はさらに広がる可能性があります。
まとめ:実務者研修は「将来の年収」を変える投資

実務者研修修了者の平均月給は327,260円。無資格(290,620円)からは月3.7万円・年44万円のアップですが、初任者研修(324,830円)との差は月2,400円にすぎません。資格手当も半数以上の職場でゼロが実態です。
では、実務者研修に価値がないのかというと、まったく逆です。実務者研修の真価は「介護福祉士への受験資格」「サービス提供責任者への昇進」「派遣での時給直接アップ」という3つのキャリアパスを開けることにあります。
2026年6月の臨時改定で全従事者に月1万円の賃上げが実施され、介護職の給与水準は着実に上昇しています。この流れの中で、実務者研修→介護福祉士→「経験・技能のある介護職員」というキャリアパスを歩むことが、処遇改善の恩恵を最大限に受けるための最短ルートです。
公式/参考URL一覧
- 厚労省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/24/dl/r06gaiyou.pdf
- 厚労省「処遇改善加算の基本的考え方」 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001335946.pdf
- きらケア「実務者研修の平均年収・資格手当」 https://job.kiracare.jp/note/article/54820/
- 三幸福祉カレッジ「実務者研修修了者の給料」 https://www.sanko-fukushi.com/news/colum_jitsumugekkyuu/
- 社保審・介護給付費分科会 審議報告 https://gemmed.ghc-j.com/?p=72494
- alma社労士事務所 https://alma-sr.com/2026/02/28/


