「子どもに、ずっと続けたがっているピアノを、続けさせてあげたい…」
「でも、平日の夕方にある教室への送迎、物理的に、絶対に無理!」
「私の仕事復帰のために、子どもの”やりたい”を諦めさせなければならないの…?」
「小1の壁」には、学童問題の裏に隠された、もう一つの巨大な壁が存在します。それが、「習い事の送迎問題」です。保育園時代は、園が習い事のバス停になってくれたり、延長保育で時間を調整できたりしたかもしれません。しかし、小学校に入った途端、そのサポートは失われ、「学校終わり(15時)〜習い事開始(17時)」という、魔の”空白の2時間”と、親の物理的な送迎が必須になるという、厳しい現実に直面します。
この問題を前に、多くのワーママが、「私が仕事を諦める」か「子どもが習い事を諦める」かという、残酷な二者択一を迫られてきました。その必要は、もうありません。
この記事は、あなたが「自分の仕事」も「子どもの習い事」も、どちらも諦めないための、超・具体的な「両立問題・解決マニュアル」です。送迎をアウトソースする5つの具体的な「外部委託サービス」から、あなたの働き方そのものを変える「勤務時間ハック」まで。あなたが今すぐ検討できる、あらゆる選択肢を、費用やメリット・デメリットと共に、徹底的に解説します。
この記事のポイント
- 送迎は「親がやるべき」という固定観念を捨てることが第一歩
- ファミサポやシッターなど5つの外部委託サービスを活用できる
- 中抜け勤務や時短勤務など働き方を見直すことで両立が可能になる
- 送迎問題は「物流課題」として戦略的に解決すべき経営課題である
- 自分の家庭のリソースを可視化し最適なチーム編成を行うことが成功のカギ

大前提:送迎は「親がやるべき」という呪いを捨てる
送迎は愛情のバロメーターではなく「物流問題」として捉えることが解決の第一歩
- 子どもの送迎は親がやらなければならないという昭和の固定観念を捨てる
- 真の目的は子どもが安全に楽しく習い事に通える環境を構築すること
- 多様な人やサービスを頼ることで子どもの社会性が育まれる
- 親の心の余裕が生まれ子どもに笑顔で接する時間が増える
この問題を解決するための、最も重要なマインドセット。それは、「子どもの送迎は、親がやらなければならない」という、昭和の固定観念を、今すぐゴミ箱に捨てることです。
あなたの目的は、「自分で送迎すること」ではありません。あなたの真の目的は、「子どもが、安全に、そして楽しく、習い事に通い続けられる環境を、構築すること」のはずです。その目的を達成するためなら、手段は、親の送迎である必要は全くありません。
むしろ、多様な人やサービスを頼ることは、子どもにとっては親以外の人と関わる社会性を育む良い機会になります。親にとっては心の余裕が生まれ、子どもに笑顔で接する時間が増えるという、計り知れないメリットをもたらします。
送迎は、愛情のバロメーターではない。それは、解決すべき「物流(ロジスティクス)問題」である。この、ドライな視点を持つことが、すべてを解決する第一歩です。
【STEP1:問題の可視化】あなたの「送迎ギャップ」は何分?
- 子どもの下校時間と習い事開始時間の差を把握する
- 自分の定時と移動時間を具体的に計算する
- いつ・誰が・何分足りないのかを明確にする
- タイムテーブルを作成して課題を可視化する
対策を考える前に、まず、あなたの家庭が抱える「時間差(送迎ギャップ)」を、具体的に数字で把握しましょう。
タイムテーブル作成ワークシート

まずは以下の項目を書き出して、あなたの家庭の送迎状況を整理してみましょう。このワークシートを埋めることで、問題の所在が明確になります。
- 子どもの下校時間:14:45
- 習い事の場所:〇〇スイミングスクール
- 習い事の開始時間:17:00
- 学校から習い事までの移動時間:20分
- あなたの定時(終業時間):16:00
- 職場から自宅(または学童)までの移動時間:30分
- 自宅(または学童)から習い事までの移動時間:15分
シミュレーション例
16:00に退社し、16:30に学童へお迎え。そこからスイミングに向かうと、到着は16:45。15分前に着くので、ママの送迎は可能です。
しかし、スイミングが終わるのは18:00。そこから帰宅すると18:15。夕食の準備を考えると、かなり慌ただしい状況になります。
このように、「いつ」「誰が」「何分足りないのか」を具体的にすることで、打つべき対策が明確になります。あなたも自分の家庭の状況をこのように可視化してみてください。
【STEP2:解決策の選択】送迎問題を解決する「5つの外部委託サービス」
- ファミサポは最強のコスパで地域の繋がりも生まれる
- シルバー人材センターは人生経験豊富なシニアによる安心サポート
- ベビーシッターは質が高くオーダーメイドで依頼できる
- 送迎付き習い事なら親は送迎を一切考えなくてよい
- ママ友との共同送迎は0円だが人間関係のリスクもある
あなたの「送迎ギャップ」を埋めるための、具体的なサービスカタログです。費用とメリットを比較し、あなたの家庭に合うものを探しましょう。

解決策1:ファミリー・サポート・センター(ファミサポ)
最強のコストパフォーマンス。地域の繋がりも生まれるサービスです。
依頼できること:学校の指定場所(学童や校門など)で子どもをピックアップ → 習い事の教室まで送る → (必要であれば)習い事の終了時間にピックアップ → 自宅まで送り届ける。
- メリット:とにかく安い。マンツーマンで、きめ細やかな対応が期待できる。
- デメリット:都合の良いサポーターさんが、必ず見つかるとは限らない。「登録したけど、マッチングしなかった」というケースも多い。
賢い使い方:仕事復帰を決めたら、一番に登録しておくべきサービス。メインの手段としてだけでなく、他の手段が使えなかった時の「保険」として、複数のサポーターさんと繋がっておくのが理想です。
解決策2:シルバー人材センター
ファミサポの代替案。送迎のプロフェッショナルとして活用できます。
依頼できること:ファミサポとほぼ同様の送迎・見守りサービス。
- メリット:安価。人生経験豊富なシニア世代による、安心感のあるサポート。
- デメリット:対応できる業務が「送迎」や「簡単な見守り」に限定されることが多い。地域によっては、子育て支援サービス自体を行っていない場合も。
賢い使い方:ファミサポでサポーターが見つからなかった場合に、次に問い合わせるべき選択肢。「送迎だけ」というピンポイントな依頼に、快く応じてくれることが多い。
解決策3:ベビーシッター/キッズシッター
質の高さと確実性。送迎+αのオーダーメイド保育が可能です。
依頼できること:送迎はもちろん、習い事の前の宿題サポート、ピアノの練習、夕食の準備、入浴補助まで、あらゆることをオーダーメイドで依頼可能。
- メリット:確実に見つかる。保育士資格を持つなど、プロによる質の高い保育。自宅での保育なので、子どもが安心できる。
- デメリット:費用が高い。
賢い使い方:週1回など、どうしても親が対応できない曜日だけ、定期で依頼する。国の補助制度(ベビーシッター派遣事業割引券など)や、福利厚生で割引がないかを確認する。KIDSNA Sitter(キズナシッター)などのマッチングアプリなら、1時間単位で気軽に探せる。
解決策4:送迎付きの習い事/送迎代行サービス
教室が、送迎問題を解決してくれるケース。親は送迎のことを一切考えなくてよいのが最大のメリットです。
種類:
- 教室の送迎バス:スイミングスクールや大手英語教室などで導入が進んでいる。複数の小学校を巡回してくれる。
- 民間の送迎代行サービス:「東京かあさん」など、子どもの送迎を専門に行うサービス。複数の習い事を掛け持ちしている場合に便利。
- メリット:親は、送迎のことを一切考えなくてよい。
- デメリット:送迎ルートや時間に、自分が合わせる必要がある。
賢い使い方:これから習い事を始めるなら、「送迎サービスの有無」を、教室選びの最優先事項にする。
解決策5:「ママ友」との共同送迎(乗り合い)
究極の0円ソリューション。しかし、人間関係のリスクも伴います。
方法:同じ曜日に、同じ習い事に通うママ友と、「行きは私が、帰りはあなたがお迎えする」「月・水はうち、火・木はそっち」といった形で、協力体制を築く。
メリット:無料。子どもも、友達と一緒なので楽しい。
デメリット:
- 人間関係のトラブルに発展しやすい:時間にルーズ、お礼がない、価値観の違いなどで、小さな不満が蓄積する。
- 責任の所在:万が一、事故やトラブルがあった場合の責任問題が非常にデリケート。
賢い使い方:
- 相手を慎重に選ぶ:時間やお金にきっちりしている、価値観の合う相手とだけ組む。
- ルールを最初に決める:遅刻した場合の連絡方法、休む場合のルールなどを、最初に明確に書面で交わしておく。
- 感謝を忘れない:「やってもらって当たり前」と思わず、毎回必ず「ありがとう」を伝え、定期的にお礼をする。
【STEP3:働き方の見直し】送迎から逆算する「3つの勤務パターン」
- 中抜け勤務でフレキシブルに送迎時間を確保する
- 超時短勤務に切り替えて外部サービス費用を削減する
- 週4日勤務など出勤日を減らして習い事の日を休みにする
- 収入と外部委託費用のバランスを計算して判断する
外部サービスに頼るだけでなく、あなた自身の「働き方」を柔軟に変えることで、問題が解決することもあります。

勤務パターン1:「中抜け」が可能な職場を選ぶ
- 働き方:例えば、9:00〜17:30勤務(休憩1時間)の職場で、「16:30〜17:30」に中抜けして送迎し、その後、自宅で残りの30分を在宅勤務する、といった柔軟な働き方。
フレックスタイム制や在宅勤務が導入されている職場を選ぶ。顔合わせの際に、「子どもの習い事の送迎で、週に1〜2回、1時間ほど中抜けさせていただくことは可能でしょうか?」と、具体的な相談をしてみる。理解のある職場であれば、検討してくれる可能性は十分にある。
勤務パターン2:「超・時短勤務」に切り替える
- 働き方:9:00〜15:30(または16:00)までの時短勤務に切り替える。
収入は減るが、外部サービスに支払う費用も減るため、トータルでの収支を計算してみる。時短勤務に理解のある職場や、コールセンターなど、もともと短時間シフトが豊富な職種を狙う。
勤務パターン3:「週4日勤務」など、出勤日を減らす
- 働き方:習い事のある曜日を、まるごとお休みにする。
「週4日勤務OK」の求人を探す。事務職などでも、意外と見つかる。収入への影響と、送迎をアウトソースした場合の費用を天秤にかける。
➡️ 柔軟な働き方について、もっと知りたい方はこちらの記事へ!
【43. 小1の壁対策|学童なしママの派遣勤務パターン3選】
習い事送迎とワーママの両立を成功させる実践的ヒント
- バックアッププランを必ず用意しておく
- 子どもに送迎について事前に説明し安心させる
- サービス提供者との信頼関係を大切にする
- 定期的に送迎体制を見直し改善する
バックアッププランの重要性
メインの送迎手段が使えなくなった時のために、必ず複数の選択肢を確保しておくことが重要です。例えば、ファミサポをメインにしつつ、サポーターさんが急に都合が悪くなった時のために、シッターサービスにも登録しておく。夫や祖父母にも、緊急時に対応してもらえるよう、事前に話し合っておく。
このような「二重三重のセーフティネット」を張っておくことで、突発的なトラブルにも慌てずに対応できます。
子どもへの説明とケア
親以外の人に送迎を頼む場合、子どもが不安にならないよう、事前にしっかりと説明することが大切です。「ママはお仕事があるから、〇〇さんが送ってくれるよ。とっても優しい人だから安心してね」と伝える。
初めての送迎の日は、可能であれば親も一緒に行き、サポーターさんと子どもを引き合わせる時間を作ると良いでしょう。子どもが安心して送迎サービスを利用できる環境作りを心がけてください。
サービス提供者との良好な関係構築
ファミサポやシッター、ママ友など、人に頼る送迎では、相手との信頼関係が成功のカギを握ります。感謝の気持ちを言葉で伝える、時々お礼の品を渡す、相手の都合を最大限尊重するなど、良好な関係を維持する努力を惜しまないでください。
また、子どもの様子や習い事での出来事など、コミュニケーションを密に取ることで、安心して任せられる関係性を築くことができます。
➡️ 【42. 夫婦分担制で成功|派遣復帰前に決めるべき家庭ルール】
➡️ 【44. 「小1の壁」完全攻略|学童以外の7つの選択肢】
よくある質問|送迎問題解決のために知っておきたいQ&A
まとめ:あなたは「司令塔」。最適なチームを編成しよう

習い事の送迎問題は、ワーママ一人で抱え込む、根性の問題ではありません。それは、あなたの家庭というチームの「リソース(資源)」を、どう最適に配分するかという、極めて知的な「経営課題」です。
- あなたというリソース:送迎に、週何時間使える?
- 夫というリソース:彼の協力は、どのくらい期待できる?
- 祖父母というリソース:どのくらいの頻度で、頼ることができる?
- お金というリソース:外部委託に、月いくらまで投資できる?
- 地域というリソース:ファミサポやシルバー人材センターは、活用できそうか?
あなたは、これらのリソースを采配する「司令塔(CEO)」です。一つの駒(あなた自身)だけで戦うのではなく、すべての駒を盤上に並べ、あなたの家庭にとっての「必勝パターン」を、戦略的に組み立ててください。
子どもの「やりたい」という気持ちと、あなたの「働きたい」という気持ち。その両方を、絶対に諦める必要はないのですから。
この記事で紹介した5つの外部委託サービスと3つの勤務パターンを組み合わせることで、あなたの家庭に最適な送迎体制を構築できるはずです。まずは「送迎ギャップ」を可視化し、利用できるサービスをリストアップすることから始めてみてください。
参考URL一覧
- 一般社団法人全国子育てタクシー協会 (子育てタクシー・キッズタクシーの情報)https://www.kosodate-taxi.com/
- KIDSNA Sitter(キズナシッター) (ベビーシッターマッチングサービス例)https://sitter.kidsna.com/
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