第13回:【お金の話】辞める前に絶対やるべき。40代の退職金・年金・資産計画シミュレーション

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辞める前に絶対やるべき。40代の退職金・年金・資産計画シミュレーション

これまでの旅路で、あなたはキャリアの選択肢を劇的に広げました。心は、新しい未来に向けて走り出したいと叫んでいるかもしれません。しかし、そのアクセルを踏み込む寸前、あなたの足をガッチリと掴んで離さない、重い鎖の存在に気づきます。

この記事のポイント

  • 漠然としたお金の不安が40代を「辞められない」呪縛に縛り付けている
  • 現状把握で最低生活防衛資金(月額)を明確にする
  • 資産の棚卸しで現金・投資・退職金の武器を確認
  • 転職・独立シナリオを数字でシミュレーション
  • ねんきんネットで老後の年金見込み額を直視
目次

「でも、お金が…」その一言があなたの人生を縛り付けている

  • 住宅ローンあと20年・子どもの大学費用・老後不安の重い鎖
  • 漠然とした不安は正体不明だからこそ怖い
  • 数字という光を当てて感情を脇に置いた冷静な分析が必要

「住宅ローンは、あと20年残っている」
「子どもの大学費用は、これからが本番だ」
「老後は、本当に大丈夫なんだろうか…」

そう、「お金」です。この漠然とした、しかし強烈な不安こそが、多くの40代を「辞めたいけど、辞められない」という呪縛に縛り付けている最大の原因です。

しかし、その不安は、正体不明だからこそ怖いのです。今回は、その正体不明のオバケに「数字」という光を当て、退治していくための、極めて重要なステップに入ります。感情を一旦脇に置き、あなたのキャリアという会社の「財務状況」を冷静に分析しましょう。この作業なくして、後悔のない決断はありえません。

Step1:現状把握 ― 我が家は、毎月いくらで生きているのか

  • 1ヶ月間の家計簿アプリによる1円単位での支出記録
  • 固定費と変動費への分類で支出構造を可視化
  • 最低生活防衛資金(月額)の算出が最重要

まず、全ての土台となる「支出」を把握します。どんぶり勘定は今日で終わりです。

アクション:今日から1ヶ月間、家計簿アプリ(マネーフォワードMEなど)やスプレッドシートを使い、1円単位で家計の支出をすべて記録・可視化してください。クレジットカードや銀行口座を連携すれば、手間はほとんどかかりません。

記録したら、支出を以下の2つに分類します。

スクロールできます
支出分類内容
固定費住居費、水道光熱費、通信費、保険料、サブスク代など、毎月ほぼ固定で出ていくお金
変動費食費、交際費、交通費、趣味・娯楽費など、月によって変動するお金

この作業で導き出すべき最も重要な数字、それは「最低生活防衛資金(月額)」です。これは、贅沢を一切排除し、「これさえあれば、とりあえず家族が生きていける」という、ギリギリのラインの月間支出額を指します。この数字が、あなたの今後の全てのシミュレーションの基礎となります。

Step2:資産の棚卸し ― 我が家の「武器と弾薬」はどれくらいあるか

  • 現金・預貯金のすぐに使える流動性資産
  • 株式・投資信託の時価評価額
  • 退職金の自己都合退職時概算額(最重要)

次に、今のあなたが持つ「財務的な武器」をすべてリストアップします。

アクション:以下の項目を、すべて書き出してください。

1. 現金・預貯金

普通預金、定期預金など、すぐに使えるお金の合計額。これが最も重要な緊急時の生命線となります。

2. 投資資産

株式、投資信託(NISA、iDeCo含む)などの、現在の時価評価額。市場の変動があるため、保守的に見積もることが重要です。

3. 保険

貯蓄型生命保険などの、今解約した場合の「解約返戻金」の額。保険会社のWebサイトや年次報告書で確認できます。

4. 退職金(最重要)

会社の就業規則を確認し、「自己都合で、今退職した場合」に受け取れる退職金の概算額を算出します。人事部に問い合わせる、社内ポータルで確認するなど、必ず正確な数字を把握してください。これは、あなたが思っている以上に大きな資産かもしれません。

これらの合計が、現時点でのあなたの「純資産」です。

Step3:シミュレーション ― 未来のシナリオを「数字」で描く

  • シナリオA:転職の場合(3ヶ月のつなぎ資金)
  • シナリオB:独立の場合(12ヶ月の独立準備資金)
  • 不安から具体的な目標への変換

Step1と2で算出した数字を使い、あなたが選ぶ可能性のある未来をシミュレーションします。

シナリオA:会社を辞め、3ヶ月後に転職先が決まる場合

計算式:(最低生活防衛資金 × 3ヶ月)+ 転職活動費(約10〜20万円)=必要な「つなぎ資金」

チェック:この「つなぎ資金」を、あなたの「現金・預貯金」だけで賄えますか?退職金に手をつける必要はありますか?

セーフティネット:ハローワークで受給資格を確認し、「失業手当」がいつから、いくら貰えるかを把握しておきましょう。

シナリオB:会社を辞め、独立・起業する場合

計算式:(最低生活防衛資金 × 12ヶ月)+ 事業の初期費用 =必要な「独立準備資金」

解説:独立の場合、収入が安定するまで最低1年はかかると想定し、1年分の生活費を準備しておくのが鉄則です。

チェック:この「独立準備資金」を、すべての資産(預貯金+投資資産+退職金)で準備できますか?副業からの収入を、どのくらい見込めますか?

このシミュレーションによって、「不安だ」という感情が、「あと〇〇万円貯めれば、3ヶ月は無収入でも大丈夫だ」という具体的な目標に変わります

Step4:老後の計算 ― 「ねんきんネット」で未来を直視する

  • ねんきんネットで将来受け取れる年金見込み額を確認
  • 会社員継続と独立時の年金額差を把握
  • 具体的な老後資金対策の立案

40代の決断は、老後に直結します。必ず確認しておきましょう。

アクション:日本年金機構の「ねんきんネット」に登録・ログインしてください。そこには、あなたのこれまでの年金加入記録と、将来受け取れる年金の見込み額が、明確に記されています。

チェック:

  • このまま今の会社で働き続けた場合の年金見込み額はいくらか?
  • 会社を辞めて独立し、国民年金に切り替わった場合、見込み額はいくらになるか?(厚生年金がなくなるため、通常は大きく減額します)

この差額を知ることで、独立する場合はiDeCoを満額にするなど、具体的な老後資金対策を立てることができます。

よくある質問

退職金の額が思ったより少ない場合はどうすればよいでしょうか?

現実を受け入れた上で、副業での収入増加や転職時の年収アップを目指しましょう。また、退職金以外の資産(投資信託や貯蓄)を増やすことで補完することも可能です。重要なのは現状を正確に把握することです。

家計の見直しで固定費を削減するコツはありますか?

まず通信費・保険料・サブスクリプションサービスを見直してください。これらは一度見直せば継続的に効果があります。住宅ローンの借り換えも金利状況によっては大きな効果を期待できます。

失業手当はどのくらいの期間もらえるのでしょうか?

雇用保険の加入期間と年齢によって異なりますが、40代で10年以上加入していれば、自己都合退職でも120日間受給可能です。ハローワークで具体的な金額と期間を確認することをおすすめします。

独立準備資金として1年分は本当に必要でしょうか?

業種や事業規模によりますが、安全性を考慮すると1年分は妥当です。ただし、副業で既に収入がある場合や、クライアントが確保できている場合は、もう少し少なくても可能かもしれません。リスク許容度に応じて調整してください。

まとめ:数字は、あなたを自由にするための「翼」である

お疲れ様でした。もしかしたら、想像以上に厳しい数字を目の当たりにして、少し落ち込んでいるかもしれません。しかし、これであなたは、根拠のない不安に怯えるステージを卒業しました。

現状を正確に知ることは、絶望するためではありません。目的地(理想の未来)にたどり着くために、どのルートを通り、どれくらいの燃料(資金)が必要なのかを、正確に把握するためです。

数字は、あなたを縛る鎖ではありません。現実という大地から、理想という空へ飛び立つための、論理と計画でできた「翼」なのです。

自分自身のキャリアの選択肢と、それを支える財務状況。その両方を、あなたは今、その手で把握しました。残るは、あと一つ。すべての情報が出揃った今、あなたは何を基準に、未来を「決断」するのか。

次回、いよいよこのWeb書籍のクライマックスです。【最終決断】転職か、残留か、独立か。40代のキャリア、後悔しない選択をするための思考法について、解説していきます。

全目次

本編:会社を辞めずに始める「自分だけのキャリア」の見つけ方

【第1部】絶望の正体を知る

【第2部】自分を再生する3つのステップ

【第3部】選択肢を手に入れる

【第4部】未来へ踏み出す

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