前回の記事で、あなたは自分の中に眠っていた数々の「武器(スキル)」を発見しました。もう「自分には何もない」と卑下する必要はありません。あなたは、確かな価値と経験を持つ、歴戦のプロフェッショナルです。
この記事のポイント
- 武器を手にした次は人生の冒険の「目的地」を定めることが重要
- 40代にこそキャリア設計図が必要な3つの明確な理由がある
- 3ステップで後悔しない未来設計図を作成できる
- 設計図は書き換えるためにあり柔軟性が重要
- 主体的にキャリアの舵を取り続けること自体に価値がある
武器を手にした40代が直面する新たな課題とは
- 強みがわかっても「目的地」がわからず迷子になりがち
- 40代は忙しく長期的な視点でキャリアを考える時間を失いがち
- 武器があっても倒すべき竜の場所がわからなければ冒険は始まらない
しかし、ここで多くの人が新たな壁にぶつかります。「自分の強みはわかった。でも、この武器を手に、いったいどこへ向かえばいいんだ…?」
そうです。どんなに鋭い剣や頑丈な盾を持っていても、倒すべき竜がいる場所、守るべきお城の場所、つまり「目的地」がわからなければ、冒険の旅は始まりません。ただ、不安な気持ちのまま、同じ場所をぐるぐると回り続けることになってしまいます。
日々の業務、家庭のこと、目の前のタスク…。40代はあまりにも忙しく、5年後、10年後といった長期的な視点で自分のキャリアを考える時間を失いがちです。
今回は、これまでの分析で手に入れた「現在地」と「武器」の情報をもとに、あなたの人生という冒険の「目的地」を定めるための「未来の設計図」を描く方法を、具体的にお伝えします。
なぜ40代にこそ「キャリア設計図」が必要なのか
- 人生の残り時間は有限で試行錯誤の余裕が少なくなっている
- 40代になり価値観が変化し優先順位をキャリアに反映させる必要
- 会社の寿命よりキャリア寿命が長く自分で舵を取る必要
「キャリアプランなんて、意識の高い若者が作ればいいものだろう」そう思うかもしれません。しかし、人生の折り返し地点を過ぎた40代にこそ、この設計図は不可欠なのです。その理由は3つあります。
理由①:人生の残り時間は有限だから
20代の頃のように、何度も試行錯誤を繰り返す時間的な余裕は少なくなってきています。どこに向かうかを定めず、ただ目の前の道を歩いているだけでは、気づいたときには全く望まない場所にたどり着いてしまうかもしれません。
「目的地」を定めることで、日々の選択に一貫性が生まれ、最短距離で理想の未来に近づけるのです。時間は有限な資源であり、40代からは特にその使い方が人生の満足度を大きく左右します。
理由②:あなたの「価値観」は変化しているから
がむしゃらに働いて出世や高収入を目指していた20代。その頃に大切にしていたものと、今、あなたが本当に大切にしたいものは、同じでしょうか?「家族と過ごす時間」「心身の健康」「社会に貢献している実感」…。
40代になり、守るべきものが増え、人生の優先順位は変わってきているはずです。その変化した価値観を、キャリアに反映させる必要があります。若い頃の価値観のまま進み続けると、達成した時に虚無感を覚える可能性があります。
理由③:会社の寿命より、あなたのキャリア寿命のほうが長いから
終身雇用が崩壊した今、会社があなたのキャリアを一生保証してくれることはありません。会社にキャリアを委ねることは、沈むかもしれない船に自分の命を預けるようなものです。
自分の船は、自分で舵を取る。そのための海図こそが、キャリアの設計図なのです。この設計図は、あなたを縛るためのものではありません。むしろ、変化の激しい時代の中で道に迷ったとき、いつでも立ち返ることができる「北極星」のような役割を果たしてくれるのです。
【実践】後悔しない人生を送るための「未来設計図」3ステップ作成術
- Step1:制約を外して描く「5年後の理想の1日」で価値観をあぶり出す
- Step2:「仕事・私生活・お金」3つの観点でありたい姿を言語化
- Step3:バックキャスティングで「今やるべきこと」を明確化
それでは、実際にあなたの未来設計図(ver 1.0)を作成してみましょう。リラックスして、自分の心に素直になることがポイントです。
Step1:すべての制約を外して描く「5年後の理想の1日」
もし、お金、時間、場所、人間関係といった制約が一切なかったとしたら、5年後のあなたの「最高の平日」は、どんな1日でしょうか?できるだけ具体的に、朝起きてから夜寝るまでを想像して書き出してみてください。
- 朝:何時に起きますか?カーテンを開けたとき、どんな景色が見えますか?誰と朝食を食べていますか?
- 午前:どんな仕事をしていますか?それはオフィスですか、自宅ですか?どんな服を着て、誰と関わっていますか?
- 昼:誰と、どこで、どんな昼食をとっていますか?
- 午後:仕事の続きですか?それとも、全く違う活動をしていますか?どんな気持ちで取り組んでいますか?
- 夜:仕事が終わり、寝るまでの時間をどう過ごしますか?趣味、家族との団らん、自己投資…?
このワークの目的は、具体的な仕事内容を決めることではありません。あなたが「どんな状態」であれば幸せを感じるのか、その本質的な価値観(例:静かな環境で集中したい、多くの人と関わりたい、家族との時間を最優先したい、裁量権を持って働きたい)をあぶり出すことです。
Step2:「仕事・私生活・お金」3つの観点で”ありたい姿”を言語化する
Step1で見えてきた価値観を、より具体的な目標に落とし込んでいきます。以下の3つの観点から、5年後のありたい姿を明確にしましょう。
観点 | 具体的な目標例 |
---|---|
① 仕事(Work)のありたい姿 | 〇〇分野の専門家、年収800万円、週2日リモートワーク |
② 私生活(Life)のありたい姿 | 平日夜は家族全員で夕食、週末は趣味の釣り、年10万円は書籍代 |
③ お金(Money)のありたい姿 | 住宅ローン残高〇万円、教育費〇万円貯蓄、老後資産〇万円 |
すべてを完璧に埋める必要はありません。現時点で「こうなっていたら最高だな」と思う姿を、素直に書き出してみましょう。数値は具体的であればあるほど、後のプランニングが行いやすくなります。
Step3:”バックキャスティング”で「今やるべきこと」を明確にする
5年後の目的地が決まったら、そこから現在地に向かって逆算(バックキャスティング)し、「今、何をすべきか」を考えます。遠い未来の大きな目標も、1年後の具体的なマイルストーンに分解することで、現実的なタスクに見えてくるはずです。
- 例1:「5年後に〇〇分野の専門家(Work)になる」→【1年後の目標】関連資格である△△の勉強開始、社内関連プロジェクトに手を挙げる
- 例2:「5年後に年収800万円(Work)を達成する」→【1年後の目標】現在業務で売上を前年比120%にする明確な実績を作る
- 例3:「5年後に平日は家族と夕食(Life)をとる」→【1年後の目標】業務効率化で月平均残業時間を20時間以内に抑える働き方確立
遠い未来の大きな目標も、こうして「1年後の具体的なマイルストーン」に分解することで、途端に現実的なタスクに見えてくるはずです。重要なのは、5年後から逆算して今年やるべきこと、今月やるべきこと、今週やるべきことまで落とし込むことです。
設計図の真の価値と継続的な見直しの重要性
- 設計図は絶対不変のものではなく定期的に見直し書き換えるためにある
- 価値観と環境の変化に合わせて柔軟にアップデートすることが重要
- 主体的にキャリアの舵を取り続けること自体に価値がある
最後に、最も重要なことをお伝えします。この設計図は、一度作ったら絶対に変えてはいけない、というものでは全くありません。むしろ、定期的に見直し、書き換えるためにあります。
あなたの価値観も、あなたを取り巻く環境も、これから先変化していきます。その変化に合わせて、設計図を柔軟にアップデートしていくことが大切なのです。
計画通りに進むこと以上に、「自分はどこに向かっているのか」を常に意識し、主体的にキャリアの舵を取り続けることそのものに、価値があるのです。定期的な見直しの頻度は、少なくとも年1回、できれば半年に1回程度が理想的です。
よくある質問
- 未来設計図を作ったものの、実現できる気がしません。どうすれば良いでしょうか?
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まずは5年後の目標を1年後、6ヶ月後、1ヶ月後の小さなステップに分解してください。大きな目標も小さなステップの積み重ねです。完璧を目指さず、方向性が合っていれば十分です。
- 家族の理解が得られず、自分だけでキャリア設計を進めて良いのでしょうか?
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家族は人生のパートナーです。設計図の作成過程で家族と対話し、お互いの価値観を共有することが重要です。一人よがりな計画ではなく、家族全体の幸福を考慮した設計図を作りましょう。
- 設計図を作っても、会社の方針や経済状況に左右されるのではないでしょうか?
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確かに外部環境の影響はありますが、だからこそ設計図が必要です。変化に対応するための軸となる価値観と目標があることで、環境変化にも主体的に対応できるようになります。
まとめ:現在地を知り、武器を磨き、目的地を定めた冒険者へ
これまでの旅路で、あなたは「現在地(自己分析)」を正確に把握し、「武器(スキル棚卸し)」を磨き上げ、そして今回、進むべき「目的地(未来の設計図)」を定めました。
もうあなたは、暗闇の中で途方に暮れる旅人ではありません。自分の地図とコンパスを持ち、どこへ向かうべきかを理解した、自信に満ちた冒険者です。
次からは、いよいよ目的地に向かうための、より具体的な「旅の準備」に入っていきます。未来の設計図を実現するために、今のあなたに足りない装備(スキル)をどう補っていくのか。
次回、【STEP2-① スキル獲得】40代スキルなしは勘違い!今から学ぶべきリスキリング戦略とおすすめ資格5選で、新しい武器を手に入れるための具体的な方法を解説します。
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