「定年後は、シルバー人材センターに登録して、のんびり働こうかな」「役所が関わっているし、ブラックなことはないだろう」
そう考えているなら、少し危険です。確かにシルバー人材センターは、高年齢者雇用安定法に基づく公的な団体ですが、その設立目的は「雇用の確保(生活費を稼ぐこと)」ではありません。あくま「生きがいの充実」と「社会参加」が目的なのです。
この目的のズレを理解せずに登録すると、「時給換算したら最低賃金以下だった!」「仕事中に怪我をしたのに、労災が下りない!」といったトラブルに巻き込まれます。
この記事のポイント
- 平均月収は約3〜5万円。生活の柱にはならない
- 「週20時間未満」の制限でガッツリ働けない
- 報酬は「配分金」。最低賃金法が適用されない
- 最大の落とし穴は「労災なし」
- 「稼ぐ」なら派遣一択。時給も労災も完備
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【月収3万円】これがシルバー人材センターの現実だ

- 平均月収は約3万〜5万円程度
- 「週20時間の壁」で稼げない仕組み
- 年金の不足分(月10万〜15万)を補うには全く足りない
まずは、最も気になる「いくら稼げるのか」というデータを見てみましょう。
平均月収は3万〜5万円
調査データによると、シルバー人材センター会員の平均月収は約3万円〜5万円程度です(月8〜10日勤務の場合)。
「えっ、それだけ?」と思いましたか?しかし、これが現実です。あくまで「お小遣い」の範囲であり、年金の不足分(月10万〜15万)を補うには全く足りません。
なぜ稼げないのか?「週20時間の壁」
稼げない最大の理由は、仕事がないからではありません。「働いてはいけない」というルールがあるからです。
シルバー人材センターの仕事は、「臨時的かつ短期的」なものに限ると法律で定められています。
| 制限項目 | 内容 |
|---|---|
| 就業日数 | 月10日程度まで |
| 就業時間 | 週20時間未満 |
現役世代の雇用を奪わないよう、このような制限が設けられています。つまり、「もっと働いて稼ぎたい!」と希望しても、センター側は「ルールなので無理です」と断らざるを得ないのです。
恐ろしい「請負契約」の罠(労災・インボイス)
- 「労働者としての権利がない」という大きなリスク
- 労災保険・最低賃金法が適用されない
- インボイス制度で手取りが減る可能性も
収入が低いだけならまだしも、シルバー人材センターには「労働者としての権利がない」という大きなリスクがあります。
1. あなたは「労働者」ではない
シルバー人材センターと会員の関係は「雇用契約」ではありません。「請負(うけおい)」または「委任」契約です。これは、あなたが「個人事業主」として仕事を請け負うことを意味します。
その結果、以下の法律が適用されません。
- 労働基準法(有給休暇なし)
- 最低賃金法
- 労災保険法
2. 怪我をしても「労災」が出ない
これが最大のリスクです。例えば、庭木の剪定中に梯子から落ちて骨折したとします。
通常のアルバイトなら「労災」が下り、治療費は全額無料、休業補償も出ます。しかし、シルバー人材センターの場合、労災は適用されません。
代わりに独自の「シルバー保険(傷害保険)」が適用されますが、補償額は労災に比べて低く、治療費の一部が自己負担になるケースがあります。過去には、作業中に指を切断する大怪我をしたのに労災が認められず、裁判になった事例もあります。
3. 最低賃金を割ることも?
「配分金」は賃金ではないため、最低賃金を守る義務がありません。センター側は「最低賃金を下回らないよう配慮する」としていますが、作業に時間がかかりすぎた場合、時給換算すると数百円になってしまうことも理論上あり得ます。
4. インボイス制度で手取り減?
さらに追い打ちをかけるのが、インボイス制度です。会員は個人事業主扱いなので、インボイス発行事業者にならない場合、センター側の税負担が増えるため、将来的に配分金が値下げされる(消費税分が引かれる)可能性があります。
【徹底比較】シルバー vs 派遣 vs ハローワーク
- 3つの働き方を比較
- 生活費なら「派遣」一択
「じゃあ、どこで働けばいいの?」という疑問に答えるため、3つの働き方を比較しました。
働き方比較表
| 特徴 | シルバー人材センター | 派遣会社 | ハローワーク(パート) |
|---|---|---|---|
| 契約形態 | 請負・委任(個人事業主) | 雇用契約(労働者) | 雇用契約(労働者) |
| 平均月収 | 3万〜5万円 | 10万〜20万円 | 8万〜15万円 |
| 時給相場 | 最低賃金と同等かそれ以下 | 1,300円〜(高い) | 1,100円〜 |
| 労災保険 | なし(独自保険のみ) | あり(完備) | あり(完備) |
| 働き方 | 週20時間未満(制限あり) | 週30時間〜も可(自由) | 企業による |
| 仕事内容 | 草むしり、駐輪場管理 | 事務、受付、軽作業 | 清掃、介護、レジ |
| 向いている人 | 社会参加したい人 | しっかり稼ぎたい人 | 地元で働きたい人 |
結論:生活費なら「派遣」一択
表を見れば一目瞭然です。生活費の足しにしたいなら、法的保護(労災・有給)があり、時給も高い「派遣」を選ぶのが合理的です。
同じ「軽作業」や「受付」をするにしても、シルバー人材センター経由だと時給1,100円(労災なし)、派遣経由なら時給1,400円(労災あり)ということがザラにあります。
派遣の詳しい活用法やハローワークとの使い分けは[60歳からのハローワーク活用術|「良い求人」は検索機に出てこない?窓口攻略法]をご覧ください。
シルバー人材センターに向いている人・向いていない人
- 目的が「生きがい」なら向いている
- 目的が「生活費」なら向いていない
向いている人
- 年金だけで生活できるが、暇を持て余している人
- 地域の役に立ちたい、社会参加したい人
- お金より仲間との交流を重視する人
- 週1〜2回、軽い運動がてら働きたい人
向いていない人
- 年金だけでは足りず、月10万円以上稼ぐ必要がある人
- 労災や有給休暇など、法的保護を重視する人
- 2025年の給付金縮小分をカバーしたい人
- フルタイムに近い形でしっかり働きたい人
もし後者に該当するなら、迷わず[記事E1]で紹介しているエージェントに登録してください。
よくある質問
まとめ:シルバー人材センターは「趣味のサークル」と思え

- 「生きがい」と「社会参加」が目的なら最適
- 「生活費を稼ぐ」なら間違いなく不適
- 法的保護がある「派遣」「パート」を選べ
シルバー人材センターを否定するつもりはありません。「家にいても暇だから、週に1回くらい外に出て、地域のために汗を流したい」「お金より、仲間との交流が目的だ」そう割り切れる人にとっては、素晴らしい場所です。
しかし、「年金が少ないから生活費を稼がないといけない」「2025年の給付金縮小分をカバーしたい」という「切実な動機」で登録するのは間違いです。それは、釣り竿を持たずに魚釣りに行くようなものです。
あなたの貴重な時間と労働力を安売りしてはいけません。しっかりと「雇用契約」を結び、法律に守られながら、適正な時給で働く。それが、60代が自分を守るための最低条件です。
次のステップ
- 60代歓迎の派遣会社を探す → おすすめ転職サイト・エージェントランキング
- ハローワークとの違いを知る → 60歳からのハローワーク活用術
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公式/参考URL一覧
- 全国シルバー人材センター事業協会: シルバー人材センターとは
- 厚生労働省: シルバー人材センターの適正就業ガイドライン
- 国税庁: インボイス制度の概要

