「もう、立ち仕事は腰に来るから無理」「夏は涼しく、冬は暖かいオフィスで働きたい」「昔、事務をやっていたからPCくらいなら打てる」
そう考えて、ハローワークの検索機で「一般事務」「パート」「60歳以上」と条件を入れて検索ボタンを押したあなた。画面に出てきた求人の少なさと、その条件の悪さに愕然としたのではないでしょうか?
時給は地域の最低賃金スレスレ。備考欄には「雑務あり」「パソコン持ち込み」などの謎の文言。勤務地は駅からバスで20分の倉庫街……。
「私の価値って、こんなもの?」いいえ、違います。あなたの価値が低いのではなく、「ハローワークという場所」に、あなたが求める「まともな事務職」が存在しないだけなのです。
この記事のポイント
- 事務職の有効求人倍率は0.3倍以下の激戦区
- 「アットホームな職場」は地雷ワード
- 狙うべきは「調剤薬局」「介護施設」の事務
- 派遣の方が時給も環境も圧倒的に良い
- ハロワ×派遣の「二刀流」が正解
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検証!ハローワークにある「60歳歓迎・事務」の正体
- 家族経営の「よろず雑用係」に注意
- 「ノルマなし」のテレアポは罠
- 官公庁の臨時職員は「当たり」だが超高倍率
まず、ハローワークでよく見かける「シニア歓迎」「女性活躍中」の事務求人が、実際にはどのような仕事なのか。ありがちな「地雷求人票」を再現し、その裏側を読み解きます。
ケース1:【地雷度★5】家族経営の「よろず雑用係」

| 求人票の項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 職種 | 一般事務(パート) |
| 時給 | 最低賃金+10円 |
| 仕事内容 | 電話応対、伝票整理、事務所内の清掃、お茶出し、その他付随する業務 |
| 特記事項 | アットホームな職場です。少人数で和気あいあいとやっています。 |
出ました、「アットホーム」「その他付随する業務」。これは翻訳すると、「社長の奥さん(経理担当)の機嫌を取りながら、トイレ掃除から買い出しまで全部やってくれる便利な人」の募集です。「事務」という名目ですが、実際にはPCに向かう時間は半分以下。残りは掃除や雑用です。家族経営特有の濃密すぎる人間関係に巻き込まれ、精神をすり減らす60代女性が後を絶ちません。
ケース2:【地雷度★4】永遠に電話をかけ続ける「テレアポ部隊」

| 求人票の項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 職種 | オフィスワーク(発信業務) |
| 時給 | 1,300円(インセンティブあり) |
| 仕事内容 | リストに基づき、お客様にサービスのご案内をするお仕事です。マニュアル完備。 |
| 特記事項 | ノルマはありません(目標はあります)。 |
時給が良いので飛びつきたくなりますが、これは「テレアポ(営業電話)」です。「ノルマなし」と書いてあっても、「目標」という名の事実上のノルマがあり、獲得件数が少ないと居心地が悪くなります。一日中、知らない相手からガチャ切りされたり怒鳴られたりするため、メンタルが強くないと1週間で辞めることになります。これを「事務」と呼ぶのは罠です。
ケース3:【当たり?】官公庁の「臨時職員(期間限定)」

| 求人票の項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 職種 | 確定申告会場の受付・入力補助 |
| 時給 | 1,150円 |
| 期間 | 1月中旬~3月中旬(2ヶ月限定) |
| 仕事内容 | 書類確認、PC入力補助 |
これは数少ない「当たり」です。業務内容は明確で、理不尽な要求も少なく、環境も整備されています。しかし、問題は「超・高倍率」であること。募集が出た瞬間に、地元の主婦層(30代〜50代)が殺到し、書類選考であっという間に埋まります。60代がここに滑り込むには、ハローワークの公開情報を待っていては遅く、前年度の実績やコネクションが必要になる場合もあります。
なぜハローワークには「良い事務」がないのか?
- 事務職の有効求人倍率は「0.3倍」の激戦区
- 良い企業は「派遣」を使う
- まともな事務はハローワークに来ない
「もっと普通の、会社員としての事務はないの?」そう思うのも無理はありません。しかし、構造的な理由で、ハローワークには「普通の事務」は回ってこないのです。

理由1:事務職の有効求人倍率は「0.3倍」の激戦区
厚生労働省のデータによれば、事務職の有効求人倍率は常に0.3倍〜0.4倍程度です。これは、「1人の事務員の椅子を、3人以上の求職者で奪い合っている」状態です。
対して、60代求職者の数は増え続けています。企業側からすれば、「30代の経験者」と「60代のブランクあり」が同時に応募してきたら、どちらを選ぶでしょうか?残酷ですが、前者が選ばれます。結果、60代まで回ってくるのは、誰もやりたがらない「不人気な事務(雑用)」だけになるのです。
理由2:良い企業は「派遣」を使う
資金力のあるまともな企業は、採用の手間を省くために「派遣会社」を使います。「PCスキルが確実にある人を送ってほしい」「面接の手間を省きたい」と考える企業は、ハローワークではなく派遣エージェントに依頼を出します。
つまり、「きれいなオフィスで、PCスキルを活かせる仕事」は、ハローワークに来る前に派遣ルートで蒸発しているのです。
それでも座り仕事を勝ち取る「3つの抜け道」
- 業界をズラす「介護・医療・調剤」
- ハローワーク職員に「非公開」を聞く
- 「派遣会社」に登録して時給を上げる
では、60代女性は座り仕事を諦めて、清掃や立ち仕事をするしかないのでしょうか?いいえ、戦略を変えれば「座れる場所」はまだあります。
抜け道1:業界をズラす「介護・医療・調剤」
一般企業の「一般事務」はレッドオーシャンですが、業界特化型の事務は穴場です。
| 職種 | 仕事内容 | 60代女性に向く理由 |
|---|---|---|
| 調剤薬局の事務補助 | 患者さんの受付、薬の手帳の確認など | 清潔な環境で座って働ける |
| 介護施設の事務 | 電話対応、備品発注など庶務的な仕事 | 物腰の柔らかさが歓迎される |
| マンション管理のコンシェルジュ | 高級マンションの受付 | 上品な対応が求められる |
これらの求人は、「一般事務」という検索ワードでは引っかからないことがあります。「医療事務」「受付」「管理員」などのワードで再検索してみましょう。事務職を狙う際の具体的な戦略は[60代女性の「事務職」は狭き門?採用されるための「PCスキル」と狙い目の業界]で詳しく解説しています。
抜け道2:ハローワーク職員に「非公開」を聞く
[60歳からのハローワーク活用術|「良い求人」は検索機に出てこない?窓口攻略法]でも触れましたが、ハローワークの検索機に出ていない求人を窓口で聞くのも手です。
「事務が希望ですが、軽作業や検品など、座ってできる作業なら検討します」と伝えてみてください。「座り仕事=事務」という固定観念を外すと、工場でのラベル貼り(座り作業)や、簡単な部品検査など、意外な案件を紹介してもらえることがあります。
抜け道3:「派遣会社」に登録して時給を上げる
これが最も現実的かつ、待遇が良い方法です。ハローワークで時給1,100円のパートを探すより、派遣会社に登録して時給1,500円の仕事を紹介してもらう方が、手取りも環境も良くなります。
60代女性におすすめの派遣職種
- 大学や学校の事務室:繁忙期のみの短期案件が多い
- コールセンター(受信):通販の注文受付など座り仕事の代表格
- データ入力:対人ストレスが少ない
派遣会社は、「60代でも紹介できる案件があるか」を登録時に正直に教えてくれます。無駄な面接を受ける時間を節約できるのも大きなメリットです。
ハローワーク vs エージェント(派遣)徹底比較表
- 時給・環境・仕事内容を徹底比較
- あなたに向いているのはどっち?
最後に、ハローワークとエージェント(派遣)、どちらで探すべきかを一目で分かる表にまとめました。

一目でわかる比較表
| 特徴 | ハローワーク(パート) | エージェント(派遣) |
|---|---|---|
| 主な職種 | 雑務兼任事務、清掃、介護 | コールセンター、データ入力、受付 |
| 時給相場 | 最低賃金 〜 1,200円 | 1,300円 〜 1,700円 |
| 年齢の壁 | 求人票上は不問だが、実は厳しい | スキルがあれば60代も可 |
| 職場環境 | 中小零細、設備が古い | 大手企業、オフィスが綺麗 |
| 仕事内容 | 「なんでも屋」になりがち | 契約範囲内のみ(明確) |
| こんな人に | 家の近所で働きたい人 | 多少遠くても稼ぎたい人 |
一目瞭然です。「家の近所」にこだわりすぎて、ブラックな雑用事務で消耗するか。少し通勤してでも、空調の効いた綺麗なオフィスで、高時給で働くか。あなたの「体力」と「プライド」を守れるのは、どちらでしょうか?
よくある質問
まとめ:その「事務」へのこだわりが、あなたを苦しめているかもしれない

- 「事務職」という肩書きより「尊厳を持って働ける場所」
- 派遣は「スマートな契約関係」でシニアにふさわしい
- ハロワ+派遣の「二刀流」が最強の盾
ハローワークで「60歳以上・女性・事務」を探すことの難しさを、正直にお伝えしました。厳しい現実ですが、これを知らずにハローワークに通い続け、不採用通知の山を築くよりは、よほど有益だと信じています。
あなたに必要なのは、「事務職」という肩書きでしょうか?それとも、「体力的に無理なく、尊厳を持って働ける場所」でしょうか?
「派遣」という働き方は、正社員になれなかった人の受け皿ではありません。自分の時間を切り売りし、プロとして対価を得る、シニアにこそふさわしい「スマートな契約関係」です。
まずは、ハローワークに行きつつ、スマホで派遣会社にも登録してみる。その「二刀流」が、あなたの老後の資金と心の余裕を守る、最強の盾となるはずです。
次のステップ
- 事務職を狙う戦略を立てる → 60代女性の「事務職」は狭き門?採用されるためのPCスキルと狙い目業界
- ハローワーク窓口攻略法を知る → 60歳からのハローワーク活用術
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公式/参考URL一覧
- 厚生労働省: 一般職業紹介状況(職業別有効求人倍率)
- 厚生労働省: 男女雇用機会均等法のあらまし
- 日本人材派遣協会: 派遣で働くための基礎知識
- 独立行政法人 労働政策研究・研修機構: 60代女性の就業実態調査

