初めてハローワークを訪れた60代の方が、必ずと言っていいほど陥る光景があります。入り口で番号札を取り、ずらりと並んだタッチパネル式の「求人検索機」の前に座り、条件を入力する。
「年齢：60歳以上」「職種：事務・管理」……検索ボタンをポチッ。
画面に表示されるのは、「最低賃金の清掃」「深夜の警備」「過酷な介護現場」ばかり。「やっぱり、俺の仕事なんてないんだ……」と肩を落とし、プリントアウトした求人票をゴミ箱に捨てて帰る。
これでは、何のためにハローワークに来たのか分かりません。はっきり申し上げます。その使い方は、完全に間違っています。
この記事のポイント
- 検索機の求人は「氷山の一角」に過ぎない
- 良い案件は窓口相談でしか出てこない
- 職員を味方につけ「年齢の壁」を突破する
- 職業訓練で「給付期間の延長」という裏メリット
- ハロワ×エージェントの「二刀流」が正解
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【2026年版】まずはお金の計算。「もらえるもの」をフル活用せよ
- 失業給付（基本手当）の基礎知識を押さえる
- 高年齢雇用継続給付が15%→10%に縮小
- 退職タイミングで数百万円の差が出る
仕事を探す前に、まずは「防御力」を高める必要があります。2025年4月の法改正は、60代の懐事情を直撃します。
失業給付（基本手当）の基礎知識
定年退職した場合、多くの人は「一般の離職者」として扱われますが、条件によっては「特定受給資格者（倒産・解雇など）」や「特定理由離職者」となり、給付日数が優遇されることがあります。
| 離職者の種類 | 給付日数 |
|---|---|
| 一般の離職者（定年など） | 最大150日（勤続20年以上） |
| 65歳以上で退職した場合 | 「高年齢求職者給付金」として一時金（30日または50日分）のみ |
【重要】64歳11ヶ月で退職するか、65歳0ヶ月で退職するかで、トータルの受給額が数百万円変わるケースがあります
【緊急】高年齢雇用継続給付の縮小（15%→10%）
もしあなたが、「60歳以降も同じ会社で再雇用される」あるいは「すぐに再就職して給料が下がった」場合、国から支給される「高年齢雇用継続給付」が重要になります。
これが、2025年4月から給付率が最大15%から10%に縮小されます。つまり、これまでより手取りが減るということです。
ハローワークの窓口では、この「給付金を含めた手取りシミュレーション」をしてくれます。「月給20万円の仕事」を見つけたとき、「給付金10%（2万円）」を足して生活ができるか？この計算をせずに就職してしまうと、後で「生活費が足りない」と泣きを見ることになります。
詳細なシミュレーションと早見表は[記事B3]で確認できます。
検索機の「罠」と、良い求人が埋もれる理由
- 「カラ求人」と「出しっぱなし求人」の罠
- 良い求人は「窓口」で止まっている
- 良い席は「顔なじみ」に配られる
なぜ、検索機には魅力的な求人が少ないのでしょうか？それには、ハローワーク特有のシステム上の理由があります。
「カラ求人」と「出しっぱなし求人」
ハローワークへの求人掲載は無料です。そのため、企業側には「とりあえず出しておこう」という心理が働きます。中には、既に採用が終わっているのに取り下げ忘れている「出しっぱなし求人」や、採用する気がないのに出している「カラ求人（助成金目当てなど）」が混ざっています。
検索機はこれらをフィルターできません。真面目に検索して応募しても、「ああ、あれはもう決まったんだよね」と門前払いを食らうのは、このためです。
良い求人は「窓口」で止まっている
ここが最重要ポイントです。地元の優良企業が、「ハローワークの〇〇さん（ベテラン職員）」を信頼して、こんな相談をすることがあります。
「〇〇さん、今度経理の欠員が出るんだけど、誰か良い人いない？変な人が来ると困るから、検索機で大々的に募集する前に、誰か紹介してよ」
このような「半・非公開求人」は、検索機には出てきません。あるいは、検索機に出る前に、窓口の職員が「あ、この仕事なら、毎日来ているAさんにぴったりだ」と、紹介状を書いて埋まってしまうのです。
つまり、良い席は「顔なじみ」に配られるのが、ハローワークというアナログな世界の掟なのです。
職員を味方につける「窓口攻略」5つの鉄則
- 検索だけして帰らない、必ず窓口相談を
- 同じ職員を指名して関係性を構築
- 年齢制限の壁を「電話一本」で突破してもらう
では、どうすればその「顔なじみ」になれるのでしょうか？元ハローワーク相談員や、採用担当者の話を総合した「攻略テクニック」を伝授します。
鉄則1〜3：基本の立ち回り
| 鉄則 | 具体的な行動 |
|---|---|
| 鉄則1：職業相談の実績を作る | 検索機で印刷して帰らず、必ず窓口で相談。求職活動実績＋職員へのアピール |
| 鉄則2：同じ職員を指名する | 「前回の〇〇さんにお願いしたい」と指名。経歴を知る職員を作る |
| 鉄則3：服装はオフィスカジュアル | ジャージNG。「そのまま面接に行ける服装」で信頼を獲得 |
鉄則4：【秘技】年齢制限の壁を壊してもらう
求人票に「59歳以下（定年のため）」と書かれていても、諦めるのは早いです。窓口の職員にこう頼んでみてください。
「この仕事、経験があり自信もあるのですが、年齢で対象外になっています。ダメ元で構わないので、企業に『60代でも検討してもらえないか』と電話で聞いてもらえませんか？」
職員経由で問い合わせると、企業側も「ハローワークの紹介なら…」「経験者なら会ってみようか」となるケースが意外と多いのです。これを自分一人で電話するとただの迷惑ですが、職員を通すことで「正式な打診」になります。これこそが、窓口を使う最大のメリットです。
鉄則5：「裏求人」を引き出すキラーフレーズ
職員と仲良くなったら、こんな言葉を投げてみてください。
「検索機には出ていないけど、最近入ったばかりの求人や、〇〇さんから見て『ここは働きやすい』という地元の企業はありませんか？」
職員は地元の事情通です。「あそこの社長はシニアに理解がある」「この会社は離職率が高いから辞めたほうがいい」といった、データにはない「生の情報」を持っています。熱意と礼儀を持って接すれば、その情報を教えてくれます。
「職業訓練」という選択肢～スキルアップと給付延長の一石二鳥～
- 60代に人気のコースを把握する
- 裏メリット：給付金が延長される
- 「学び直し」しながら生活費を確保
ハローワークには、仕事紹介以外にもう一つ、強力な武器があります。それ「ハロートレーニング（公的職業訓練）」です。
60代に人気のコース
| コース名 | 取得できる資格・スキル | 特徴 |
|---|---|---|
| ビル管理（ビルメン） | ボイラー技士、電気工事士など | 男性に圧倒的人気、就職率も高い |
| 介護職員初任者研修 | 介護の基礎資格 | 常に求人がある最強のセーフティネット |
| パソコン・経理基礎 | エクセル、会計ソフト | 事務職を目指す方向け |
裏メリット：給付金が延長される？
雇用保険を受給している人が、ハローワークの指示で公共職業訓練を受ける場合、訓練期間中は失業給付の支給が延長される（訓練延長給付）などのメリットがあります。
「じっくりスキルを身につけながら、生活費の心配をせずに次の準備ができる」という制度です。定年後の「学び直し（リスキリング）」として、これを使わない手はありません。
※受給要件は複雑なので、必ず窓口で「自分が対象になるか」を確認してください。
ハローワークの限界と「エージェント」との二刀流
- ハローワークは年収が低い傾向
- 専門職の求人は少ない
- おいしいとこ取りの「二刀流」が最強
ここまでハローワークの活用法を説きましたが、残念ながらハローワークにも限界があります。
ハローワークの弱点
| 弱点 | 理由 |
|---|---|
| 年収が低い傾向がある | 無料で掲載できるため、資金力のない中小・零細企業が多い |
| 専門職の求人が少ない | 「元部長」「高度なエンジニア」向けの案件は回ってこない |
| 企業の内情が分からない | 職員も全ての企業を見ていないため、「ブラック企業」を見抜けないことも |
結論：おいしいとこ取りの「二刀流」が最強
だからこそ、ハローワークを「土台（地元の仕事・職業訓練）」とし、転職エージェントを「上積み（高収入・専門職）」として併用するのです。
- ハローワーク：週1回通い、職員と情報交換＋職業訓練も検討
- 転職エージェント：自宅でスマホから登録、非公開求人のオファーを待つ
この2つを同時に回すことで、情報の網羅性は100%に近づきます。「ハローワークには良い仕事がない」と嘆く前に、エージェントにも登録し、「世の中にはどんな求人があるのか」を比較してみてください。その「価格差」に驚くはずです。
ハローワークと一緒に登録すべきエージェントは[60代におすすめの転職サイト・エージェント比較ランキングTOP5｜断られないのはココ]で詳しく比較しています。
よくある質問
まとめ：ハローワークは「検索」する場所ではなく「営業」する場所だ
- 受け身にならない、自分から動く
- 職員をあなたの「営業担当」にする
- 小さなアクションが「運命の求人」を引き寄せる
2026年のハローワーク活用術、いかがでしたでしょうか。大切なのは、「受け身にならない」ことです。
機械の前に座って、流れてくる求人をただ眺めているだけでは、あなたは「その他大勢のシニア」の一人に過ぎません。しかし、窓口に座り、職員の目を見て、自分の経験と熱意を伝え、「あなたに紹介したい」と思わせることができれば、あなたは「特別な候補者」になります。
ハローワークは、国が用意してくれた、最大の「無料営業所」です。ここの職員をあなたの「営業担当」にできるかどうかは、あなたのコミュニケーション次第です。
明日、ハローワークに行くなら、まずは少し背筋を伸ばし、職員に笑顔で挨拶することから始めてみませんか？その小さなアクションが、検索機には載っていない「運命の求人」を引き寄せる鍵になるかもしれません。
次のステップ
- エージェントにも登録して「高待遇求人」の相場を知る → おすすめ転職サイト・エージェントランキング
- 給付金縮小の詳細を確認する → 2025年4月給付金縮小のシミュレーション
- 「二刀流」戦略の全体像を把握する → 60代の転職・再就職ロードマップ
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公式/参考URL一覧
- 厚生労働省： ハローワークインターネットサービス
- 厚生労働省： 雇用保険制度
- 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構（JEED）： ハロートレーニング（離職者訓練）
- 厚生労働省： 高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続きについて
