定年後の「燃え尽き」を防ぐ。60代男性のプライド整理術とメンタルケア

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定年退職の日、花束をもらい、部下に見送られ、「これからは悠々自適だ」と思ったのも束の間。翌日の朝、目が覚めてあなたは気づきます。

「行く場所がない」「電話が鳴らない」「メールが来ない」

最初の1週間は骨休めとして楽しめます。しかし、1ヶ月経ち、3ヶ月経つと、その静寂は「社会からの疎外感」へと変わります。テレビを見ながら「けしからん」と独り言を言い、妻が外出すると「どこへ行くんだ?俺の昼飯は?」と聞いてしまう。

もし、これに心当たりがあるなら、あなたは「リタイアメントブルー」、通称「元部長病」の予備軍、あるいは既に発症しているかもしれません。

この記事のポイント

  • 「元部長病」は真面目な仕事人間ほど発症しやすい
  • 男性のメンタル不調は「役割の喪失」とリンク
  • 趣味ではなく「仕事」が特効薬
  • プライドを「鎧」から「肌着」に着替える
  • 妻とは適度な距離(ランチは別々)が円満の秘訣

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目次

自己診断チャート~あなたは「元部長病」にかかっていませんか?~

  • 店員への態度が変わる人は要注意
  • 過去の武勇伝を繰り返すのは危険信号
  • 3個以上当てはまれば「重度」

まずは、今の自分の状態を客観視してみましょう。以下の項目にいくつ当てはまりますか?

【元部長病チェックリスト】

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チェック項目症状の詳細
店員への態度レストランや役所で、店員の対応が遅いとイライラし、つい説教をしてしまう
過去の反芻「あのプロジェクトは俺が成功させた」という話を、妻や子供に何度もしてしまう
妻への依存妻が一人で出かけようとすると不機嫌になり、「一緒に行く」とついて行こうとする(濡れ落ち葉症候群)
名刺への執着現役時代の名刺をまだ財布に入れており、機会があれば出そうとする
否定から入るテレビのニュースや、新しい技術(スマホ決済など)に対し、「あんなものはダメだ」と否定から入る

【診断結果】1〜2個:軽度(意識すれば修正可能)/3個以上:重度(周囲が疲弊、孤立が深まる)

なぜ、男性は「過去」にしがみつくのか?

女性は地域コミュニティや友人関係など、仕事以外にも「横のつながり」を持っています。対して男性、特に昭和の企業戦士は、人間関係のほぼ全てが「縦のつながり(上司・部下)」でした。

そのため、組織という梯子(はしご)を外された瞬間、誰とどう接していいか分からなくなるのです。「元部長病」とは、梯子がないのに、まだ空中に浮いているつもりでいる状態のことです。

採用担当者が警戒する「元部長の振る舞い」については[60代の転職で「決まらない人」の共通点|採用担当者がこっそり明かすNG行動と履歴書の汚れ]で詳しく解説しています。

メンタル崩壊のメカニズム~「役割」がないと人は壊れる~

  • 60代男性の精神的危機は「役割喪失」が原因
  • 真面目な仕事人間ほど「3つの喪失」に苦しむ
  • 「趣味を見つけろ」は暴力的なアドバイス

「働かなくていいなんて最高じゃないか」と思うかもしれません。しかし、データは残酷な真実を示しています。

60代男性の精神的危機と「3つの喪失」

60代男性の自殺動機やうつの原因において、「経済・生活問題」と並んで「勤務問題(仕事の悩み・喪失)」が高い割合を占めます。人は「誰かの役に立っている」という実感(自己効力感)がないと、精神のバランスを保てない生き物です。

特に真面目に働いてきた人ほど、定年後に以下の「3つの喪失」に直面し、五月病のような無気力状態に陥ります。

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喪失の種類具体的な症状
所属の喪失「○○会社の××です」と名乗れない不安
役割の喪失誰からも頼られず、相談もされない孤独
時間の喪失1日24時間をどう埋めればいいか分からない恐怖

「趣味を見つけろ」という暴力的なアドバイス

よく「定年後は趣味を見つけましょう」と言われますが、これは現役時代に趣味がなかった人には苦痛でしかありません。

「無理やり始めたそば打ち」や「一人で撮る写真」は、一時的な暇つぶしにはなりますが、失われた「承認欲求(誰かに認められたい)」までは満たしてくれないのです。

処方箋は「プライドの着替え」と「再就職」

  • プライドを「鎧」から「肌着」へ変える
  • 小さな「ありがとう」を稼ぐ仕事を探す
  • 週3日の仕事が自己肯定感を回復させる

では、どうすればこの「地獄」から抜け出せるのでしょうか?答えはシンプルです。「働くこと」です。ただし、現役時代と同じ働き方を目指してはいけません。

ステップ1:プライドを「鎧」から「肌着」へ

現役時代のプライドは、戦うための重い「鎧(よろい)」でした。しかし、定年後のあなたに鎧は不要です。重すぎて動けなくなるだけです。

これからは、プライドを「肌着」にしてください。外からは見えないけれど、自分を内側から温め、支えてくれるもの。

  • 「私は約束を守る」
  • 「嘘をつかない」
  • 「どんな仕事も丁寧にする」

これだけで十分立派なプライドです。肩書きなどという重い鎧は、脱ぎ捨ててしまいましょう。

ステップ2:小さな「ありがとう」を稼ぐ仕事を探す

年収1000万円を目指す転職は修羅の道ですが、月10万円、週3日の仕事なら、あなたの経験を活かせる場所は無限にあります。

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職種やりがい・感謝のポイント
マンション管理員住民からの「いつも綺麗にしてくれてありがとう」が直接届く
送迎ドライバー「安全運転で助かります」という感謝が報酬になる
ホームセンターのアドバイザーDIYの知識を活かし、客の悩みを解決する「先生」になれる

これらの仕事に、「元部長」の肩書きは不要です。しかし、「人間としての厚み」は必ず活きます。報酬は、お金だけでなく「社会的な居場所」です。これが最強のメンタルケアになります。

男女問わず未経験でも働ける職種については[記事C1]で詳しく紹介しています。

妻との距離感~「濡れ落ち葉」からの卒業~

  • 「昼食は別々」が円満の秘訣
  • 「外に敵(仕事)を作る」ことの効能
  • 家庭の平和のために「外の居場所」を持つ

最後に、家庭内での「居場所」についても触れておきます。妻にとって、定年後の夫はずっと家にいる「巨大な粗大ゴミ」になりかねません。

「昼食は別々」が円満の秘訣

「おい、昼飯は?」

この一言が、妻のストレスを最大化させます。妻には妻の生活リズムがあります。「昼は自分で作る(または外で食べる)」と宣言するだけで、妻の態度は劇的に優しくなります。

「外に敵(仕事)を作る」ことの効能

やはりここでも、週数日でも外で働くことが効いてきます。あなたが家にいない時間を作ることで、妻は息抜きができ、あなたが帰ってきた時に優しくなれます。

また、あなたが外で理不尽な客や上司(敵)と戦って帰ってくれば、妻は「戦友」として愚痴を聞いてくれるでしょう。家庭の平和を守るためにも、「外に居場所(仕事)を持つ」ことは、男の義務なのです。

よくある質問

定年後、本当に「うつ」になる人は多いのですか?

多いです。「リタイアメントブルー」や「定年うつ」と呼ばれ、特に仕事一筋だった真面目な男性ほど発症リスクが高いと言われています。症状としては、無気力、不眠、イライラ、過度の飲酒などがあります。「自分は大丈夫」と思っている人ほど要注意です。

妻に「粗大ゴミ」扱いされているような気がします。どうすればいいですか?

まず、妻の生活に干渉しすぎていないか振り返ってください。「どこへ行くの?」「何を買ってきたの?」と聞きすぎていませんか?妻には妻の世界があります。自分の時間を自分で埋める(仕事、趣味、外出)ことで、お互いの「程よい距離感」が生まれ、関係は改善します。

「週3日の仕事」でも、本当にメンタルは安定しますか?

安定します。重要なのは「社会との接点」と「誰かに必要とされている実感」です。フルタイムで疲弊する必要はありません。週3日でも、決まった時間に行く場所があり、顔を合わせる人がいて、「ありがとう」と言われる機会があれば、自己肯定感は回復します。

過去の肩書きを忘れるのは、なかなか難しいのですが…

一気に忘れる必要はありません。ただ、「表に出さない」訓練をしてください。面接や新しい職場で「元部長」を匂わせる発言は、確実にマイナス評価になります。心の中では大切にしつつ、外に出すのは「これからの自分」だけ。この切り替えができた人が、新しい環境で愛される人になれます。

心療内科に行くべきでしょうか?

不眠が2週間以上続く、食欲がない、死にたいと思うことがある、といった深刻な症状がある場合は、迷わず受診してください。ただし、「なんとなく虚しい」「やる気が出ない」という段階であれば、まずは「外に出て人と話す」ことを試してみてください。転職エージェントとの面談も、意外と心の整理になります。

まとめ:仕事は「金」のためじゃない。「魂」のためにするんだ

  • 適度に働くことが最も贅沢な休息をもたらす
  • 転職活動は「尊厳を取り戻すリハビリ」
  • 「元部長」ではなく「頼れるベテラン」として生きる

「もうあくせく働きたくない」。その気持ちは分かります。しかし、皮肉なことに、適度に働くことこそが、最も贅沢な休息をもたらしてくれます。

仕事があるからこそ、休日のビールが美味い。役割があるからこそ、孫や子供に胸を張って会える。社会と繋がっているからこそ、ボケずに若々しくいられる。

定年後の転職活動は、生活費を稼ぐためだけの活動ではありません。あなたの「尊厳(プライド)」を取り戻し、心の健康を守るためのリハビリテーションです。

もし、家で悶々としているのなら、まずは外に出てみませんか?ハローワークに行くのもいいでしょう。エージェントと話して、自分の市場価値を「棚卸し」してみるのもいいでしょう。

誰かがあなたを待っています。「元部長」ではなく、一人の「頼れるベテラン」として。

次のステップ

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記事監修者

派遣業界で15年以上、営業として企業と人をつなぐ仕事に携わってきました。現在はエフネクストの広報部に所属し、これまでの営業経験を活かしながら、会社の魅力を発信する仕事をしています。
2013年に「ビジネス実務法務検定2級」と「行政書士」資格を取得。この資格を活かし、法務やコンプライアンスの視点からも安心できる情報発信を心がけています。「人の想いと企業の想いをつなぐ広報」を目指して活動中です。

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